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トヨタ クラウン RS Advance(2.0Lターボ)新車試乗記(第838回)

Toyota Crown RS Advance

(2.0L直4ターボ・8AT・559万4400円)

FR用TNGAシャシーを採用。
よりスポーティに、安全に、
「つながる」ようになった
15代目クラウンに試乗!  

2018年08月24日

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キャラクター&開発コンセプト

15代目はTNGAプラットフォームを採用。ニュルで走りを磨く


新型トヨタ クラウン コンセプト(2017年 名古屋モーターショー)

2017年10月の東京モーターショーでコンセプトモデルを発表、2018年6月26日に発売された新型クラウンは、1955年に登場した初代から数えて15代目のモデル。

新型クラウンはトヨタの新しいプラットフォーム戦略「TNGA」に基づき、レクサスLS/LCで採用された「GA-L」ベースの新世代プラットフォームを採用。低重心化、軽量化、重量配分の最適化、高剛性化などを行い、主に国内向けのクラウンでは異例となる独ニュルブルクリンクでの走行テストも実施。意のままのハンドリングやフラットな乗り心地を追求したという。

 

(photo:トヨタ自動車)

パワートレインには、ハイブリッド車のために直列4気筒の2.5Lダイナミックフォースエンジンを使った「リダクション機構付THSⅡ」と、新型レクサスLS500hやLC500h譲りとなりトヨタブランド車では初搭載になる、V型6気筒エンジンと4段ミッションによる10段変速制御付「3.5Lマルチステージハイブリッドシステム」の2種類を用意。

また、純エンジン車には、縦置きでは先代クラウンやレクサスIS等で採用、横置きではハリアーやレクサスNX等で採用されている2.0Lターボエンジン「8AR-FTS型」を採用している。

初代コネクティッドカーとして


(photo:トヨタ自動車)

新型クラウンは同時発売された新型車カローラ スポーツと共に「初代コネクティッドカー」として登場。車載通信機DCMを全車に標準搭載し、走行データに基づくメンテナンス案内を行うなど「24時間365日、お客様のクルマとつながる」ことをアピールしている。

販売系列はトヨタ店で、月販目標台数は先代(クラウン4000台、マジェスタ500台)と同じ4500台。

発売から一ヶ月時点での受注台数は、目標の7倍となる約3万台で、滑り出しは順調だ。

 

価格帯&グレード展開

2.0Lターボ車は460万6200円~、ハイブリッド車は497万8800円~


2.0Lターボエンジン搭載車(photo:トヨタ自動車)

今回の大きな変更点は、クラウン伝統の「ロイヤル(サルーン)」(1974年の5代目から)、「マジェスタ」(1991年の9代目から)、「アスリート」(1999年の11代目から)といったサブネームが廃止され、スポーティな「RS」や上質志向の「G」「G-Exective」といったグレード構成になったこと。マジェスタが廃止されたことで、ホイールベースは先代マジェスタと同等の1サイズに統一された。

 

2.5Lハイブリッド搭載車(photo:トヨタ自動車)

パワートレインは前述の通り3種類で、2.0Lターボ車(FRのみ)は460万6200円~、2.5Lハイブリッド車(FRと4WD)は497万8800円~、3.5Lハイブリッド車(FRのみ)は623万7000円~。

グレード構成は、ベースグレードの「B」(2.0Lターボ車のみ)、その上の「S」、快適装備がそろった「G」と「G-Exective」、スポーティな「RS」と「RS Advance」など。

 

3.5Lハイブリッド車(photo:トヨタ自動車)

【2.0Lターボエンジン「8AR-FTS」(最高出力245ps、最大トルク350Nm)+8速AT】
・FR:460万6200円~559万4400円

【2.5Lエンジン「A25A-FXS」ハイブリッド(システム最高出力226ps)】
・FR:497万8800円~579万9600円
・4WD:519万4800円~632万3400円

【3.5Lエンジン「8GR-FXS」ハイブリッド(システム最高出力359ps)】
・FR:623万7000円~718万7400円

DCMを全車標準。コネクティッドサービスは3年間無料


(photo:トヨタ自動車)

車載通信機DCMは全車標準で、トヨタ独自のオンラインサービス「T-Connectサービス」をクラウンの場合は3年間無料で利用できる(4年目からは年間1万7280円かかる)。提供されるサービスは以下の通り。

■ドライバーとつながる
・eケア……車両から発信される情報をもとにコールセンター等から適切なアドバイスを受けられる。
・eケアヘルスチェックレポート……スマートフォンなどでエンジンオイル量、電子キーのバッテリー、警告灯点灯状態などを確認できる。
・コネクティッド メンテナンスパック……定期点検に加えて、車両情報(走行距離)を活用し、最適なタイミングでメンテナンスを受けることができるパック。
・MyTOYOTA for T-Connect ドライブ診断……ドライバーの運転傾向をもとに、安全・エコな運転度合いをスマホで確認でき、安全な運転度合いに応じて翌月の保険料が割引される保険プランとも連動。
・MyTOYOTA for T-Connect マイカーSecurity(リモート確認・操作)……ドア・トランクの開閉やハザードランプの点灯状態、オートアラームのON/OFF などがスマートフォンで確認でき、遠隔でドアロック、ハザードランプ消灯のリモート操作も可能。
・ヘルプネット(エアバッグ連動タイプ)……事故や急病時には専門のオペレーターが警察や消防に取り次ぐ。車両データをもとに重症度を指定してドクターヘリ等の早期出動判断を行うD-Call Netにも対応。
・トヨタつながるクルマの保険プラン……車両から取得した正確な走行データに基づき、毎月の安全運転の度合いを保険料割引に反映させる自動車保険。
・オペレーターサービス……専任のオペレーターがナビの目的地設定やホテル・レストランの予約なども遠隔操作で行ってくれる。
・エージェント(音声対話サービス)……音声対話で目的地の検索・設定やニュースや天気などの情報検索が可能。また、発話内容にあわせて車載ナビ(ローカル音声認識)とエージェント(センター音声認識)を自動的に使い分け、よりスムーズな検索を実現するハイブリッド音声認識を採用。
・ハイブリッドナビ……トヨタスマートセンターの道路交通情報とユーザーの走行情報をもとに、より短時間で到着する最適なルートを車載機に配信。
・LINE マイカーアカウント…… LINE のトークでナビの目的地登録が行えるほか、ガソリン残量や天気などのお出かけに便利な情報を得ることが可能。

■街とつながる(オプション設定)
・ITS Connect……ITS専用周波数(760MHz)を活用したITS Connectをオプション設定。クルマに搭載したセンサーでは捉えきれない見通し外の情報や信号などの情報を、道路に設置されたインフラ設備とクルマ、あるいはクルマ同士が直接通信してドライバーに知らせることで安全運転を支援。

 

プローブ情報に基づいて作成、web上で公開される「通れた道マップ」
(photo:トヨタ自動車)

■社会とつながる
・通れた道マップ……災害時の救援活動を支援する目的で、トヨタがDCM搭載車両等より収集した情報に基づいた通行実績情報を「通れた道マップ」として、Webサイトで無料公開。直近約24時間の通行実績情報が1時間ごとに更新され、災害地域での移動に役立てる。

 

パッケージング&スタイル

クーペ風&6ライトデザインに一新

車両を借りている間、何人かの社内スタッフに「バッジを見るまで、まさかクラウンとは思わなかった」と言われてしまった。それは「茜色」と呼ばれるオレンジメタリックのボディカラーのせいも多少あったと思うが、確かにデザインは大きく変わった。新型レクサスLSと基本設計を共有するTNGAプラットフォームゆえ、シルエットはボンネットやトランクリッドも含めて低く、ボディ後半は4ドアクーペ風と言うか、新型LS風になり、サイドウインドウもLS同様にCピラーにウインドウが付いた6ライトデザインになった。クラウン伝統の太いCピラーは過去のモノになった。

 

試乗車はスポーティな意匠の「RS」。メッシュタイプのフロントグリル、よりロー&ワイドに見せるフロント下部のメッキモール、操縦安定性に寄与するというサイドエアダムスカート、専用18インチアルミホイール、4本出しマフラー、リアスポイラー、ブラックのドアフレームなどが採用されている。

全幅は従来と同じ1800mmを死守

ボディサイズ(カッコ内は先代クラウン比とマジェスタ比)は、全長4910mm(+15、-60)×全幅1800mm(同じ)×全高1455mm(ほぼ同じ)、ホイールベース2920mm(+70、-5)。要するに国内での使い勝手に配慮して全幅を1800mmに収める一方で、ホイールベースは先代マジェスタと同等まで伸ばした。そのため最小回転半径は先代の5.2mから、先代マジェスタ(5.6m)並みの5.5mに拡大してしまった。

 

こちらは新型レクサス LS
(photo:トヨタ自動車)
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
トヨタ クラウン ハイブリッド(2012~2018) 4895 1800 1450-1460 2850 5.2
新型トヨタ クラウン(2018~) 4910 1800 1455 2920 5.5
トヨタ クラウン マジェスタ(2013~2018) 4970 1800 1460 2925 5.6
レクサス LS(2017~) 5235 1900 1450~1460 3125 5.6~6.0
 

インテリア&ラゲッジスペース

新開発のダブルディスプレイを採用

レクサスLCにも採用されている低重心FRプラットフォームゆえ、ドライビングポジションや運転席まわりはスポーティ。さすがに全幅がナローな分、LSやLCほど横方向は広くないが、空間構成はよく似ている。先代よりもドライバーズカーという印象が強まった。

 

一方、説明がないと面食らうのが上に8インチ、下に7インチの上下ダブルディスプレイになったインフォテイメントまわり。

下側はタッチパネルで通常は空調の操作パネルだが、ナビや車両設定などを操作する場合は目的の操作パネルに切り替え、上部ディスプレイ(非タッチパネル)をコントロールする、という仕組み。その際は、上のディスプレイとほぼ同じ画面が下側のタッチパネルにも表示される。

 

なかなかのアイディアと言うべきか、使いやすければいいと割り切ったと言うべきか、言葉に迷うところだが、慣れれてしまえばそれなりに便利だ。

後席フットルームはマジェスタ並みに

後席フットルームは「フロントシート下の足入れスペースを拡大」と資料にあるように、明らかに先代クラウン(はっきり言って狭かった)より広くなった。先代マジェスタのような、いかにも「ホイールベース伸ばしたぜ感」はないが、これなら個人タクシーやハイヤーにも十分に使えそうだ。

ちなみに後席も新型レクサスLSと座り比べると、やはり横方向は負けるとして、足入れスペースはクラウンの方が広い?気がしてしまった。いやいや、思い違いかもしれないが……。

トランク容量はそこそこ。スルーもなし

トランク容量はパワートレインで異なるが、試乗した2.0Lターボ車の場合は、床上部分だけで約430Lのようだ。大型セダンにおける荷室容量のベンチマークが500Lだとすれば少々狭いと言えるし、トランクスルーが一切できないのも人や状況によっては困る部分だろう。なお、3.5Lハイブリッド車の場合は、奥に駆動用リチウムイオン電池が搭載されるため、さらに荷室は狭くなる。

 

床下収納スペースは、2.5Lハイブリッド車(床下に駆動用ニッケル水素電池が搭載される)にはないが、2.0Lターボ車と3.5Lハイブリッド車には備わる。パンク修理キットやジャッキなどの工具も備わり、特に2.0Lターボ車の場合は上部にトレーを備えた上下2段構成になる。

 

応急用スペアタイヤは3.5Lハイブリッド車のみにオプション設定(1万0800円)。試乗した2.0Lターボ車や2.5Lハイブリッドには設定がない。

 

基本性能&ドライブフィール

2.0Lターボ車に試乗


2.0Lターボエンジン「8AR-FTS型」

今回試乗したのは2.0Lターボ車の最上級グレード「RS Advance」。車両本体が559万4400円、オプション込みで606万3660円。

「白いクラウン」を思い浮かべながらトヨタの駐車場に向かうと、そこで待っていたのはド派手なオレンジ色、もとい日本の伝統を感じさせる茜色(アカネイロ)のRS。火の玉カラーのRSと言えばカワサキだな、などとつまらぬことを考えながら気温38度Cの地上を走り出す。

 

ボディカラーは燃えるようだが、2.0Lターボエンジン「8AR-FTS」の走りは思いのほかクール。普通に大人しく運転する限り、2.5Lのハイブリッド車かと思うほど穏やかに走る。

とはいえ、そこは最高出力245ps(先代ターボの+10ps)、最大トルク350Nm(先代と同じ)。アクセルを深く踏み込めば一瞬、いや1.5瞬くらいのターボラグの後、バヒューーンと加速し始める。

それでも物足りなければ、タッチパネルにドライブモードセレクト画面を呼び出し、「スポーツ+」を選択すべし。エンジン音が迫力を増し(実はスピーカーから増幅音も出る)、エンジンの出力特性や変速プログラムもスポーティに変わる。とはいえターボラグは期待したほどには解消されないが。

【シャシー】スポーティかつスムーズ

エンジンより印象的なのがTNGAのFRシャシー。新型プリウスやカローラスポーツのFF版TNGA同様に、これも低重心かつスムーズな乗り味が一番の特徴。「意のままのハンドリング」「目線がぶれないフラットな乗り心地」という文句にウソはない。

ちなみにサスペンション形式は、フロントがハイマウント式のマルチリンク、リアもマルチリンクと形式自体はレクサスLS・LCと同じだが、全幅がLSの1900mmに対して1800mmしかないので、サスペンションは専用設計になっている。

また、試乗した2.0Lターボ車のRSには、リニアソレノイド式の電子制御ダンパー「AVS(Adaptive Variable Suspension system)」のほか、専用フロントスタビライザー、振動感を減衰するリヤパフォーマンスダンパー、ボディ剛性アップ用のリヤフロアブレース、リアの揚力低減を図るリアスポイラー等が装備されている。RSはサーキットでもノーマルのまま走れるクラウンだ。

あの手この手で静粛性も追及

シャシーでもう一つ感心したのが、ロードノイズを中心に静粛性が高いこと。車体やサスペンションが効いているのだろうが、タイヤを見たらこのRSにはブリヂストンで定番のポテンザではなく、静粛性で定評のあるレグノ GR001(サイズは225/45R18)が8Jのワイドリムにパッツンパッツンに引っ張られて付いていた。

それだけでなく、新型にはスピーカーから逆相の音を出してノイズをキャンセルする「アクティブノイズコントロール(ANC)」も採用されている。これがどの程度効果を上げているかは正直分からなかったが、試乗車にオプション装着されていたトヨタプレミアムサウンドシステム(16スピーカー/12chオーディオアンプ、10万1520円高)の音がスペックの割に今ひとつだったのは、そのせいなのか気のせいか。

新東名もストレスなく

高速道路では600kmほど試乗。0km/hから180km/hまで設定できる全車速追従機能付レーダークルーズコントロールはまったく不満なく使えるし、車線中央をキープするように操舵支援を行う「レーントレーシングアシスト(LTA)」も心強かった。

そのほか、交通標識をメーターに表示する「ロードサインアシスト(RSA)」だとか、静止物だけでなく後方接近車両や歩行者も検知する「パーキングサポートブレーキ」などもありがたい装備。「運転は得意」と思っているベテランドライバーでも恩恵を感じることがきっとあるだろう。

ただし、先行車や対向車の部分を遮光しながら出来る限りハイビームを照射するトヨタの「アダプティブハイビームシステム(AHS)」については、先行車や対向車がいる時でもメーター内に青のハイビーム警告灯が点灯するのが、今回もやはり気になってしまった。相手の迷惑にはなっていないようだが……。

ターボ車の試乗燃費は9.2~13.3km/L

今回は2.0Lターボ車にトータルで約720kmを試乗。参考ながら試乗燃費は、やや混雑気味の一般道を走った区間(約30km)が9.2km/L、夜間の空いた一般道を走った区間(約40km)が12.6km/L、主に高速道路を走った区間(約500km)が13.3km/Lだった。

なお、JC08モード燃費は12.8km/L。WLTCモードは12.4km/L(詳細は当ページ一番下のスペック表に記載)。総じて市街地では10km/Lを割り、高速ではモード燃費通りという印象だった。

ちなみに2.5L直4ハイブリッド車のモード燃費は、2.0Lターボ車より1.6~1.8倍よく、3.5L V6ハイブリッド車でも1.3~1.4倍いい。つまり燃費は圧倒的にハイブリッド車の方がいい。2.5Lハイブリッド車なら、燃料もレギュラーガソリンで済むし。2.0Lターボ車と3.5Lハイブリッド車はハイオクを要求する。

燃料タンクはどれも66Lと大きいので、航続距離は高速道路なら2.0Lターボ車でも700km超、2.5Lハイブリッド車なら軽く1000kmを超えるだろう。

ここがイイ

スポーティになった走りとデザイン

小型FF車用TNGAプラットフォーム(GA-C)を採用した現行プリウスやCH-R、新型カローラ スポーツ同様、この大型FR用TNGAプラットドーム(GA-L)を採用した新型クラウンも、低重心感が増し、乗り心地はスムーズになり、静粛性も高まるといった具合に、クルマとしてしっかり進化した。TNGAを採用したことで走りもデザインもスポーティになった。

ここがダメ

2.0Lターボ車のターボラグ

今回は2.0Lターボ車に700kmほど試乗したが、最後までターボラグは気になってしまった。燃費性能や、クラウンらしいスムーズさを優先したセッティングだと思うが、もう少し低回転からツキの良さが欲しいところ。

総合評価

新型のフロントグリルなら大丈夫

新型クラウンは、斜め横から見たときに、やや胴長な印象が古典的なスポーティ感を削いでいるように思えるが、まあ最近のトレンド風ではあり、おそらくこれで不満は出ないのだろう。何よりフロントグリルは自然で、いい感じになった。先代が出たときには「すぐに慣れるよ」なんて言われたものだが、結局最後まで慣れなかった…、皆さんはいかが? まあ新型のフロントグリルなら見慣れる必要もない。先代をどうしても買えずに代替えを先延ばしていた人が、ついに注文を入れているのでこんなに売れているのだ、と書くとフェイクニュースになってしまうが、当たらずも遠からずではないか。

走りやハードウェアの出来に関しては本文をご参照いただくとして、まず不満はなかろう。おそらくハイブリッドが主流で、どうしてもガソリンがいいという人が2.0Lの4気筒ターボを買うことになる。自然吸気のV6ガソリンエンジンが欲しいと思う人は、レクサスなりに移行してもらえばいい。日本におけるトヨタ車は「ハイブリッドがスタンダード」なのだからハイブリッドを買いましょう。それよりモーターデイズとしては、やはりコネクティッドサービスが気になる。

WiLL サイファの話


トヨタ WiLL サイファ(2002年)

コネクティッドカーと言えばWiLLサイファ。このクルマがトヨタから出たのは今から16年も前の2002年。「20代、30代の男女をターゲットとしてクルマの中で携帯電話やパソコンを安全に使いこなす」ことができるクルマとして作られ、auの通信モジュールを搭載して最大144kbpsという当時の「高速」回線で常時つながっているというのが売りだった。現在は月1000円もしない格安simでもそんなに遅いことはなく(混雑時の最悪速度がそれくらいということもあるようだが)、auの回線なら普通で数10Mbps、いくら状態が悪くても8Mbpsくらいは出るから、最大144kbpsというのは桁違いの遅さだ。

それでもその回線でディスプレイに表示できた情報は、天気やニュース、占いやクーポン、カラオケにゲーム、タウン誌などと提携したグルメやレジャー情報、さらにはショッピング、ムービープレーヤーと一通りそろっていた。しかしやはり、動きの遅さから当時ほとんど実用に耐えるものではなかったように記憶している。

 

トヨタ WiLL サイファ(2002年)

当時はまだスマホもなく、マニアがPDAと呼ばれるスマホみたいなポータブル端末を使っていた。そのマニアックなPDAとの連携もちゃんと考えられていたし、街のコンビニなどに置かれた端末(実際にどれくらい置かれたのか定かではないが)から重いデータをSDカードにダウンロードして再生することもできた。地図更新など大きなデータはパソコンでダウンロードでして更新できるなど、だいたいなんでもやれる「仕組み」はできていた。使う側のスキルは相当に要求したが……。今その資料を読んでみても、回線さえ速ければ、そのまま使えそうなコンテンツが揃っていたと思う。

通信モジュールを搭載しているということが何しろ当時としては画期的だった。携帯電話をつなげなくてもいいから、車両の位置情報を常時確認できて盗難時に見つけることができたり、ディーラーが車両情報を把握してメンテナンス情報を発信できたり、トラブル発生時に救援車両手配ができたり、オペレータセンターも用意されてオペレータがナビを遠隔設定することもできた。「どこどこまで行きたいから、ナビをセットして」というリクエストを「音声」ですればセットしてくれるわけで、これはナビを上手に使うことができないような機械に弱い人にも優しい仕組みだ。通信やコンテンツの使用量は年6600円。これが「G-BOOK」と呼ばれるサービスだった。

 

トヨタ WiLL サイファ(2002年)

WiLLサイファはヴィッツがベースのコンパクトカーで、価格も130万から150万程度。今だとすごく低価格に見える。販売目標は月1500台と少なかったが、そんな大衆車クラスに、よくぞここまでというほどの通信機能を盛り込んであり、いよいよ「つながるクルマ」が大衆車クラスから広がっていくのか、と当時は心躍らしたもの。とはいえ現実には回線速度だけでなく、表示能力等すべての面で実用には不満が多すぎ、おすすめできるとは言いがたいものでもあった。しかしトヨタがあの当時、ここまでやったことは、とにかくすごいことだった。ITの進化速度を見れば、10年もたったならきっと素晴らしい「つながるクルマの時代」がやってくるだろうと大いに期待したものだった。

■新車試乗記>トヨタ WiLL サイファ (2002年11月掲載)

もっと「スマホとつながるクルマ」に

さてそれから16年という、ある意味では気の遠くなるような時間がたって、クラウンやカローラ(スポーツ)といった日本で圧倒的に知名度の高いクルマがついに「つながるクルマ」になった。コネクティッドサービスのメニューを見ると、G-BOOKとの共通点が多い。それぞれのサービスは細かく改良され、現在の社会インフラと連携しているし、まさに正常進化と言えるだろう。究極のアナログサービスである「オペレーターサービス」も引き続きある。一つ大きく変わったことは、当時はなかったスマホとの連携ができるようになったこと。そして通信速度も向上している。これで16年前の不満はなくなった、はずだ。

はずだが、我々は16年の間に圧倒的な進化を遂げたスマホというものを知ってしまった。スマホを知ったというより、スマホ(ハードとしてのスマホとソフトとしての情報サービス)は社会を変えてしまった。だれもが小さなスマホで一瞬にして様々な情報が手に入り、どこへでもガイドしてもらえるようになった今、クルマの16年はいったい何だったのだろう。安全(通信を含めて)を担保しなくてはならないクルマが、慎重に進化せざるを得ないのは理解できるが、今回のクラウンでもやれることは驚くほど変わっていない。

 

「T-Connectサービス」の一つ、「eケア」のイメージ図(photo:トヨタ自動車)

サイファが出た2002年、パイオニアからは「エアーナビ」という通信機能を持ったカーナビが出ていた。サイファを買わなくても、どんなクルマでも搭載できる通信ナビとしてマニアックな支持を得たが、これも続かなかった(2016年にサービス終了)。そしてまさに今、2018年の8月、パイオニアは営業赤字に喘ぎ、資本・業務提携先を求めている。エアーナビがやりたかったことが今ならスマホでできてしまう。しかしパイオニアにスマホはないし、もはや日本製のスマホも風前の灯。どこで歯車が食い違ったのか。

クルマが好きで、情報サービスも好きだ。その融合がクルマ社会を、世の中を変えると思って20年以上、いろいろなクルマに乗って記事を書いてきた。サイファが出た時に書いた試乗記は今読んでも胸が熱くなる。今後さらに素晴らしいコネクティッドカーがでてくるだろうという希望に満ちていた。「一年たっても月1000万円足らずの売上にしかならない事業に、いったいいくら注ぎ込まれたのか、と考えると、トヨタのこの事業にかける姿勢が分かるはず。クルマは移動手段から情報端末に変わるという確信があるからやれるのだとおもう。21世紀初頭のエポックメイキングな工業製品は『ソニーからAIBO、ホンダからASIMO、トヨタからCYPHA』と歴史に記録されるだろう」と書いたのだが。AIBOは生産中止から最近やっと復活し、ASIMOは開発中止が噂される中、サイファの機能はクラウンに受け継がれているわけで、トヨタの持続性は高く評価したい。そしてむろん、これからに期待したい。

 

ただ、そのクラウンのコネクティッドサービスも、今回試乗中に触った限りでは今ひとつだった。ただ、相変わらずオペレータサービスは利用できるおかげで、あまり機械ものが得意でない人にもカーナビは便利なものになった。特にクラウンユーザーの年齢層であれば、誰もがスマホを使いこなせるわけではないが、オペレータサービスなら使いこなせる。ついに使えるカーナビが出た。と感じるだろう。音声でAIを呼び出しての検索は、音声認識や検索結果の精度といった点で今一つだったが、音声で人を呼び出して行うのであれば不満はないはず。このご時世でAIではなく人によって機械を動かすという点が評価されるのはかなり皮肉だが。

今後スマホの世界は、さらに進化していくだろう。となると今後はもっと「スマホとつながるクルマ」になっていくことが一番いいようにも思うが、つながるクルマに大金を注ぎ込んできたメーカーにとって、それはやはり容認できないのだろうか。あるいはセキュリティ的に微妙な部分があるスマホをクルマにつなげることのリスクだろうか。わかってはいるが、ユーザーはわかってはくれない。つながるクルマの次は、スマホとつながるクルマだと思うが、そこへ行くのにまた16年もかかるのだとしたらさて…。

 

試乗車スペック
トヨタ クラウン RS Advance
(2.0L直4ターボ・8AT・559万4400円)

●初年度登録:2018年6月
●形式:3BA-ARS220-AEZAZ
●全長4910mm×全幅1800mm×全高1455mm
●ホイールベース:2920mm
●最低地上高:135mm
●最小回転半径:5.5m
●車重(車検証記載値):1740kg(910+830)
●乗車定員:5名

●エンジン型式:8AR-FTS
●排気量:1998cc
●エンジン種類:直列4気筒DOHC・4バルブ・直噴+ポート噴射(D-4ST)・ターボ・縦置
●ボア×ストローク:86.0×86.0mm
●圧縮比:-
●最高出力:180kW(245ps)/5200-5800rpm
●最大トルク:350Nm (35.7kgm)/1650-4400rpm
●カムシャフト駆動:タイミングチェーン
●アイドリングストップ機能:有り
●使用燃料:プレミアムガソリン
●燃料タンク容量:66L

●トランスミッション:8速AT
●JC08モード燃費:12.8km/L
●WLTCモード燃費:12.4km/L
●市街地モード(WLTC-L):8.7km/L
●郊外モード(WLTC-M):12.6km/L
●高速道路モード(WLTC-H):15.1km/L

●駆動方式:FR(後輪駆動)
●サスペンション形式(前):マルチリンク+コイルスプリング
●サスペンション型式(後):マルチリンク+コイルスプリング
●タイヤ:225/45R18 ( Bridgestone Regno GP001 )

●車両本体価格:559万4400円(メーカーオプション含まず)
●試乗車価格(概算):606万3660円(オプション込み)
※オプション合計(概算):46万9260円
※オプション内訳:ITS Connect 2万7000円、電動リヤサンシェード 3万2400円、パーキングサポートブレーキ(後方歩行者)/リヤカメラディテクション、パノラミックビューモニター&インテリジェントパーキングアシスト2(巻き込み警報機能付) 12万5280円、デジタルインナーミラー 4万3200円、T-Connect SDナビゲーションシステム、トヨタプレミアムサウンドシステム(16スピーカー/12chオーディオアンプ) 10万1520円、ETC2.0ユニット(VICS機能付) 1万6200円、ドライブレコーダー(販売店オプション) 4万2660円、フロアマット(エクセレントタイプ、販売店オプション) 8万1000円

●ボディカラー:茜色(オレンジメタリック)
●試乗距離:720km
●試乗日:2018年7月
●車両協力:トヨタ自動車株式会社

 
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