Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > トヨタ ヴェルファイア ZG

トヨタ ヴェルファイア ZG新車試乗記(第831回)

Toyota Vellfire

(3.5L V6ガソリン・8AT・FF・494万7480円)

運転するより後ろがいい!?
トヨタの旗艦ミニバン、
その売れる理由を体感する!

2018年02月23日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

フェイスリフトを実施。8速ATをV6モデルで新採用


トヨタ アルファード(photo:Toyota)

「アルファード」(トヨペット店向け)と「ヴェルファイア」(ネッツ店向け)は、トヨタの高級大型ミニバン。初代アルファードは2002年にデビューし、現行モデル(2015年1月発売)は3代目。兄弟車ヴェルファイアは2008年のデビューで、現行モデル(同じく2015年1月発売)は2代目になる。

 

トヨタ ヴェルファイア(photo:Toyota)

そのアルファード/ヴェルファイアがマイナーチェンジし、2017年12月25日に発表、2018年1月8日に発売された。

デザインについてはフロントまわりを一新したほか、灯火類を変更。内装については加飾やシート表皮などを変更した。パワートレインにはハイブリッド(2.5L 直4ガソリンエンジン+前・後モーター)、純エンジンの2.5L 直4エンジン+CVT(無段変速機)、3.5L V6+8速ATの3種類を用意。V6モデルのATが従来の6速から最新の8速に格上げされたのがニュースだ。

先進安全装備をアップデート


新しいトヨタ セーフティセンスは自転車も検知可能になった(photo:Toyota)

今回のマイナーチェンジでは、第2世代となった予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」を全車に標準装備。さらに単眼カメラとミリ波レーダーの性能向上により「プリクラッシュセーフティ」が自転車や夜間の歩行者も検知可能なタイプになったほか、レーダークルーズコントロール作動時に操舵支援を行う新機能「レーントレーシングアシスト(LTA)」も新たに搭載。さらに、リヤクロストラフィックアラート(RCTA)やブラインドスポットモニター(BSM)なども採用するなど予防安全装備や運転支援機能が強化されている。

販売目標を上乗せ。市場を独占?する勢い

生産拠点はこれまで通りトヨタ車体(株)のいなべ工場(三重県いなべ市)。

月販目標台数は、アルファードが3600台、ヴェルファイアが4500台の計8100台。なお、現行モデル発売時(2015年)の目標台数はそれぞれ3000台、4000台だったので(計7000台)、アルファードは約2割、ヴェルファイアは約1割上乗せされたかっこうになる。

なお、昨年(2017年 1~12月)の販売台数は、アルファードが4万1923台(登録車で25位)、ヴェルファイアが4万6757台(同22位)だったが、2台合わせると8万8680台となり、7位のシエンタ(9万6847台)や8位のヴィッツ(9万0248台)に次ぐ台数となる。ただし、兄弟車を合計すると上位に上がってくるのはアル/ヴェルだけでなく、ヴォクシー/ノア/エスクァイア(計18万8711台)やルーミー/タンク/トール/ジャスティ(17万1180台 ※ジャスティは含まず)のように、1位のプリウス(16万0912台)を超えてしまうモデルもある。いずれも実質的にトヨタのミニバンなのが、これまたなんとも。


■過去の新車試乗記
3代目トヨタ アルファード(2015年3月掲載)

■外部リンク
トヨタ企業サイト>アルファード、ヴェルファイアをマイナーチェンジ(2017年12月25日)

 

価格帯&グレード展開

直4が335万4480円~、V6が463万2000円~、ハイブリッドが415万5055円~


トヨタ アルファード(photo:Toyota)

価格とグレード設定は、アルファードとヴェルファイアで同じ。2.5L 直4+CVT車(FFと4WD)が335万4480円~、3.5L V6+8AT車(FFと4WD)が463万2000円~、ハイブリッド(全て電気式4WDのE-Four)が436万3200円~。安全装備が増えたことで全体に高くなり、特にV6モデルでは8速ATになったせいか大幅に高くなった。

 

トヨタ ヴェルファイア(photo:Toyota)

乗車定員はキャプテンシートの7人乗りがメインだが、エントリーグレードに2列目ベンチシートの8人乗りも用意している。

また、従来通り、豪華仕様の最上級グレード「エグゼクティブ ラウンジ」もV6モデルとハイブリッドに用意。いずれも700万円台とまさに高級ミニバンだ。

 

パッケージング&スタイル

フロントまわりやライト類を一新

3年前に試乗したのは「豪華・勇壮」がデザインテーマのアルファードだったが、今回は「大胆・不敵」のヴェルファイア。上下2段のヘッドライトがヴェルファイアのトレードマークだ。

先代は販売面でヴェルファイアに押され気味だったアルファードだが、現行モデルは逆にアルファードの押し出し感が強くなり、そのあたりが販売目標の微修正(アルファードは2割アップ、ヴェルファイアは約1割アップ)に表れているのかも。今回のマイナーチェンジでは心なしか、ヴェルファイアの方に力が入っている印象。フロントまわりが一新されたほか、少々アクの強かったリヤコンビランプやバックドアガーニッシュの意匠も変更されている。

 

ボディサイズは全長4945mm(アルファード)/4935mm(ヴェルファイア)、全幅1850mm、全高1935mm、ホイールベース3000mm。ちなみに車重は約2トンで、ハイブリッド車の一部グレードでは2.2トンを超える。しかし運転したことがある人はご存知の通り、運転は抜群にしやすい。このあたりも人気の一因だろう。

 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
レクサス RX(2015~) 4890 1895 1710 2790 5.9
マツダ CX-8(2017~) 4900 1840 1730 2930 5.8
トヨタ アルファード/ヴェルファイア(2017~) 4935~4945 1850 1935~1950 3000 5.6~5.8
 

インテリア&ラゲッジスペース

クラウンアスリート風の雰囲気

インテリアに関しては、基本的なデザインはそのままだが、各モデルやグレードごとにメーター加飾やシート表皮、木目調パネルの色などを変更。従来モデルのオーナーであれば、いろいろ気付く部分があるだろう。試乗したヴェルファイアは黒木目調の加飾パネルや黒の本革シートという構成で、いわばクラウンアスリート風の硬派な雰囲気。

 

背の高いモデルだが、着座位置やフロアはそれほど高くなく、乗り降りはしやすい。運転席からの見晴らしはよく、視界の確保にこだわったことがうかがえる。試乗車には液晶ディスプレイを使ったデジタルインナーミラーも装備されていて、走行中の後方視界も良い。

 

なお、現行モデルでは助手席シートが1160mmも前後スライドする「助手席スーパーロングスライドシート」が売りの一つだが、これはハイブリッド車には設定がなく(駆動用バッテリーが前席床下にあるため)、7人乗りの一部グレードのみの設定。今回の試乗車には装備されていなかった。特別な理由がない限り、あんまり必要のない装備かも。

運転するより後席で寛ぎたい

試乗したのはV6モデルで、比較的上位の「ZG」というグレード。700万円超えの最上級グレード「エグゼクティブ ラウンジ」ほどではないが、2列目のキャプテンシートは十分に豪華。

試乗車にはオプションでさらに、JBLのプレミアムサウンドシステムや、12.1インチの天井吊下式ディスプレイを備えたリアシートエンターテイメントシステムも備わる。運転するより、後席で寛ぎたくなる。

 

サードシートもさすがミニバンのフラッグシップ、広さは十分、座り心地もよくて(もちろん2列目には劣るが)、見晴らしもいい。とはいえ走行中にはそれなりに上下に揺すられるし、騒音も高まると思われる。

シートアレンジは従来通り

荷室はサードシート使用時でもその前後スライド位置に応じて容量を調整できるほか、さらに横に跳ね上げて格納もできる。4人乗りとして使うなら、よほどの大荷物でも十分だろう。

 

床下には大容量の収納ボックス(パンク修理キット搭載車なら148L、スペアタイヤ搭載車なら66L)。その上にスライドレール用の「橋」が掛かっているのは、3列目を出来る限り後ろまでスライドできるようにするためだ。

 

基本性能&ドライブフィール

試乗したのはV6・8速ATモデル

試乗したのは3.5L V6モデルの「ZG」(FF車)。車両本体価格は494万7480円だが、試乗車は本革シートやT-Connect ナビ、3眼LEDヘッドランプ、JBLプレミアムサウンドシステムなどのオプション込みで649万6200円と、まさに「高級」ミニバン。2列目のキャプテンシートにベンチレーション機能が備わらない点とかを除けば、限りなく「エグゼクティブラウンジ」に近い。

10年くらい前は頻繁に試乗していたトヨタの3.5L V型6気筒エンジンだが、レクサスやクラウンなどのFRモデル以外で乗るのは久々。ダウンサイジング&レスシリンダーが普通になった昨今、貴重な自然吸気の6気筒エンジンだ。

とはいえ、このV6、形式こそ見慣れた「2GR」で始まるものの、直噴+ポート噴射の「D-4S」システムを搭載した「2GR-FKS」。大排気量エンジンゆえの弱点である燃費を改善したほか、最高出力301ps、最大トルク361Nm (36.8kgm)とけっこうなパワーを誇る。

 

普通に大人しく走る分には、低回転域でのトルクが印象的。V6独特のサウンドをかすかに響かせながら、この巨体をヴィッツかプリウスのように何の苦もなく走らせる。車検証で車重を確認したら、なんと2110kg。これはFF車の数値で、4WD車だと同じ仕様で2170kg。普通に走らせる限り、とてもそんなに重いとは思えない。

一方で「301psもあるとは思えないなぁ」とも途中までは思っていたが、試しにシフトレバーをマニュアルモードにして高回転まで回すと、ショートストロークのV6エンジン(ボア×ストロークは94.0mm×83.0mm)は額面通りのパワフルさと吹け上りで2.1トンのボディを軽々と引っ張る。FF車でも荒っぽさはまったくない。

ボディ剛性を若干アップ

乗り心地は前席で運転している限り問題ないが、肝心の2列目、3列目については、残念ながら時間の関係で試していないので何とも。

アルファード/ヴェルファイアはこの現行型で操縦安定性や乗り心地がグッと良くなったが、全体的に日本車らしいというかトヨタ車らしいというか、よく言えばゆったり穏やか、悪く言えばボディの剛性感はそれほどなく、これを良しとするかどうかが評価の分かれ目だろう。なお、今回のマイナーチェンジでは、構造用接着剤の適応範囲を拡大したり、高剛性ガラス接着剤を使用したりすることでボディ剛性を高め、操縦安定性や乗り心地を高めたとのこと。そこはやはり、もっと向上させたい、という判断があったのだろう。

ハンドリングについても初代アルファードはもちろん、先代アル/ヴェルあたりと比べても大幅に進化し、もう「大型ミニバンだから」という気づかいは必要なしに走るようになった。この点もボディの大きさや重さを忘れさせる一因だろう。ちなみに現行モデルのリアサスはダブルウイッシュボーン、試乗車のタイヤは235/50R18だ。

ACCが0~180km/h対応に。操舵支援も新採用

100km/h巡行時のエンジン回転数は、8速トップで1400rpmほど。ここからでもキックダウンせずに加速するのがこのエンジンのいいところ。

最新世代となったレーダークルーズコントロールをONにすれば、停止(0km/h)から全車速対応で追従走行を行うほか、設定上限速度もレクサスの新型車(LCなど)と同様に180km/hになった。

とはいえ、レーダークルーズの加速・減速調整は、今どきの(そしてレクサスLCや新型LSでも採用されている)ステアリングスイッチ方式ではなく、昔ながらのレバー上げ下げタイプ。他社のACCに慣れていると、ついつい関係のないステアリングスイッチを操作してしまうが、トヨタ車ユーザーであればすんなり使えるだろう。

 

また、新たに採用された「レーントレーシングアシスト(LTA)」のおかげで、ついにアルファード/ヴェルファイアでもレーダークルーズコントロール作動時に、操舵支援が行われるようになった。これは車線からの逸脱を防ぐだけでなく、車線中央維持をアシストするもので、実際に試してみると、その作動は今どきの最新レベル。同条件での比較ではないが、感覚的には直近で試乗したボルボの新型XC60やマツダ CX-8あたりに遜色なく思えた。とはいえジャンクションなどの曲率が大きいコーナーではやはりOFFになってしまうが。

 

あと、試乗中に何度も意識させられたのが、単眼カメラで制限速度などの交通標識を読み取り、メーター内に表示する「ロードサインアシスト(RSA)」。制限速度40km/hのところでは「40km/h」と看板マークが表示され、それを超過すると標識マークが真っ赤になる。速度抑制効果はけっこうあるように思った。

「アダプティブハイビームシステム(AHS)」を採用


3眼LEDヘッドランプ。上段の内側がハイビームで、外側2つがロービーム。下側はクリアランスランプ、コーナリングランプ、シーケンシャルターンランプ

新型アルファード/ヴェルファイアには2眼タイプのLEDヘッドランプと、先行車や対向車のドライバーを眩惑しないようハイビーム/ロービームを自動的に切り替えるオートマチックハイビーム(AHB)がほぼ全車標準になった。

さらに試乗車には、上級装備の3眼LEDヘッドライトと、照射範囲を部分的に遮光しながらハイビームを照射する「アダプティブハイビームシステム(AHS)」がオプション装備されていて、実際に試すことが出来た。

 

アダプティブハイビームシステム作動イメージ(photo:Toyota)

ヘッドランプのハイ/ローを自動で切り替える機能は今や珍しくないが、単にハイ/ローを切り替えるだけの普及型であるAHBに対して、AHSは先行車や対向車のところを巧みに遮光しながらハイビームを積極的に使用し続けるというもので、「よく照らす」という点では優秀。手動でハイビームに切り替えたくなることは一度もなかった。

 

アダプティブハイビームシステム作動イメージ(photo:Toyota)

一方で、戸惑ったのは操作方法。トヨタ車のAHSは、ライトスイッチを通常のONもしくはAUTOの位置にし、さらにライトレバーを奥に押し、さらにステアリング右下にあるメインスイッチをONにして、初めてシステムがONになる(詳しくはトヨタの公式HPにも掲載されている取扱説明書を参照)。トヨタのAHS搭載車では以前から採用されている操作方法だと思うが、今回もちょっと戸惑ってしまった。

もう一つ気になったのが、先行車や対向車がいるところでも、ときどきメーター内にハイビーム警告灯の青いランプが点灯してしまうこと(おそらく遮光ハイビームが点灯している状態)。AHSがONである限り、相手は眩しくないはずだが(実際、遮光されているようであり、対向車にパッシングもされなかった)、けっこう心配になってしまった。これもそのうち慣れるのだろうか?

試乗燃費は7.5~8.0km/L、JC08モード燃費は10.6km/L~(V6モデル)

今回は約200kmを試乗。参考ながら試乗燃費は、いつものように一般道や高速道を走った区間(約80km)が7.5km/L。郊外の一般道を大人しく走った区間(約30km)が8.0km/Lだった。

なお、JC08モード燃費は、試乗したV6モデルがマイチェン前より約1割良くなって10.6~10.8km/L(4WD車は10.4km/L)、2.5L 直4モデルが11.4~12.8km/L(4WD車はおおむね12.0km/L)、ハイブリッド車(全車E-Four)がおおむね18.4km/L。

指定燃料は、直4モデルとハイブリッドに関してはレギュラーでOKだが、V6はハイオク。ということで燃料費でV6モデルとハイブリッド車を比べてしまうと差は大きそうだ。

なお、燃料タンクは純エンジンのFF車で75L、ハイブリッド車を含む4WD車で65Lの大容量。

 

ここがイイ

取り回しの良さ。安全装備の充実

とにかく運転しやすいこと。大きなボディを軽い操作で自在に動かせるあたり、独特の快感さえある。それでいて動きは軽々しくなく、トヨタ車らしいゆったり感もあって、後席乗員のことを考えた丁寧な運転もしやすい。視界がいいせいもあって、狭いところでの取り回しも見た目ほど悪くない。今回のマイチェンモデルでは先進安全装備や運転支援装備も「今のクルマ」にふわしく充実し、安心感も高まった。誰かをもてなすための乗り物としては、究極かつ無難な選択の一つ。

 

ここがダメ

アダプティブハイビームシステムの使い勝手

本文でも触れたように、アダプティブハイビームシステム(AHS)は、ライトスイッチをハイビーム側にし、メインスイッチをONにした状態でシステムがONになるわけだが、対向車や先行車がいる場合でもハイビームが点灯していればハイビーム警告灯が青々と点灯するため「ひょっとして普通にハイビーム?」「相手は眩しくないか?」などと心配になってしまう。この手の装備はホンダのように「ライトスイッチをAUTOにすれば、オートハイビームも連動してオンになる方式」が分かりやすくていいと思うのだが。

もう一つ細かい点で気になったのは、一部グレードやパッケージオプション装着車のLEDルームランプが妙に暗いこと。夜間、運転席の床で探し物をした時には懐中電灯が必要になってしまった。今どきはスマホが懐中電灯代わりになるが、そのスマホをスルリとシートの下に落としてしまうと本気で困りそうだ。

総合評価

運転はクルマに任せたい

久々に運転したくないクルマだった。一人でこのクルマに乗っていると、巨大なムダを走らせている気になる。この燃費で動かしているのは、快適であろうキャプテンシートや、皆でワイワイ楽しむ時に有効なサードシートなのだから。この燃費ならいっそ、スーパースポーツをぶりぶり乗り回したい。いや、快適なスポーツセダンで気持ちよく走りたいものだ。

などとフリで書きたくなったのは、まさにこのクルマは運転するより乗せてもらいたいクルマだから。今のアルファード/ヴェルファイアの動力性能や操縦安定性は、もはや運転していて不満を言いたくなるものではない。視界が高くて見切りはいいし、ワインディングだって普通に走れてしまうのは驚異だったりする。ミニバンの進化はすごい。そうした性能を持ってはいるが、しかしこのクルマ、どうせなら誰かに運転してもらって、後席でゆったり過ごしたいのだ。運転はもう誰かに任せたい。誰か? そうもちろん自動運転するヴェルファイア自身に、である。

 

つまりこの手のクルマこそ、一刻も早く自動運転を実現してもらいたいものだ。行き先を指示したら、あとはこの快適そうな後席でくつろいでいれば目的地に着く、というクルマであれば、たとえ1000万円であっても「買い」だろう。いずれ自動運転車の時代になった時には、コストの安い移動のためのクルマと、こういう快適でリッチなクルマの二手に分かれるのではないか。自動運転になったら運転性能云々より、乗り心地や快適性が競われるはず。そしてそのときには、トヨタのようなこういうクルマ作りに長けたメーカーが優位になるだろう。ただ、その頃は、シェアリングなどクルマの所有形態の変化で、個人向け販売は少なくなってしまっているかもしれないが。

今でもこのクルマなら、かなり自動運転ぽさを味わうことが出来る。レーダークルーズコントロール(いわゆるACC)と「レーントレーシングアシスト(LTA)」によってステアリングに手を添えているだけで、新東名で名古屋から東京まで、たいした操作をせずに快適に移動できるだろう。レーダークルーズコントロールの設定可能速度も実用的になっているから、自然に高速道路の流れに乗って走れるはず。レーントレーシングに関しては、もう少し自然な感覚が欲しかったが、これもさらにバージョンアップされていくだろう。やっとここまで来たか、と感慨深い。やっと、ではあるが。

クルマの価格だけはインフレ傾向

いつも書くが、デイズでは2003年11月に「インテリジェントカー」という雑誌を編集し、宝島社から発売した。その時にACCを特集して、もう15年もの年月が過ぎた。15年……、一人の人生においては途方もない時間だ。そんな時間を経て、ようやく高速道路の流れに乗って走れる実用的なACCを搭載した国産車が出現しつつある。ようやくここまで来たのなら、加速度をつけて、いや制限速度をはるか超えるような速度で、進化を早めてもらいたい。15年の間に、中国の自動車産業はどこまで進化したか? 15年の間に、世界のスマホ事情はどこまで進化したか? それを思うと、今後の15年は、などと言っている場合ではないと思えてくる。

それはそうとして、昨今、国産車の価格がどんどん高くなっているように思えてならない。インテリジェントカーを読むと、アルファードの場合、レーダークルーズのない15年前の2.4Lがナビなしで265万円~、3Lが289万円~、2.4L ハイブリッドが366万円~。現在は消費税抜きで2.5Lが310.6万円~、3.5Lが458.1万円~、2.5L ハイブリッドが404万円~と、1割程度は高い感覚。性能や装備も違うので単純比較はできないものの、やはり性能や安全性が高まったのに比例して価格も上がっているのは間違いないだろう。

 

むろん、それにともなって世の人々の収入が増えているのならいいのだが、それはあまり実感できない。そして一般的な感覚ではデフレが続いている。しかしクルマの価格は確実にインフレ傾向であるかのように見える。クルマ離れが進んでいることの理由のひとつはここにあるような気がしてならない。ただ、貧富の差は広がっているらしいので、それにともなって高級車ほどよく売れているようだ。実際ミニバンの最高級クラスであるアルファード/ヴェルファイアもよく売れているようで、貧乏人がとやかく言うことではないのかもしれないが、それでも15年前の人に、ヴェルファイアの最高級グレードが今は消費税込みで700万円オーバーだと言ったら相当驚くだろう。

家賃4万円でアルファードか、家賃10万円で軽自動車か

今後、さらに装備が良くなれば、車両価格は高くなるはず。その意味では来るべき自動運転+カーシェアリングの時代(クルマを所有しない時代)に備えて、そろそろ購入・所有ではなく使用料という概念をもっと定着させていく必要があるのではないか。例えば総額700万円で買ったアルファードを5年乗って200万円で売ったとすると、年間100万円の使用料ということになる。月なら8万円くらいだ。150万円の軽自動車を5年乗って30万で売ったら、使用料は月2万円。それを誰もが基本的に必要な家賃というものとリンクさせてみると、家賃4万円のアパートに住んでアルファードに乗るのと、家賃10万円のマンションに住んで軽自動車に乗るのは同じこととなる。これを個人がどう組み合わせるかだ。

実際のところは、維持費が異なるし、クルマは人気や程度によって売却できる価格が異なるから、こんな単純計算が成り立つわけではないが、クルマと家賃という必需品(地方の生活において)の関係はこういうもの。ここを今後、ビジネスとしてメーカーがどう手当していくか、が自動運転の進化とともに課題だと思う。もちろん、メーカーではなく、そうしたサービスに特化した専業社がやることも考えられるが、メーカーこそがディーラーを巻き込んでこういう発想をすべき時に来ているのではないか。

 

さらに言えば、昨今は昔と違って国産車のモデルチェンジサイクルが長くなっている。走行性能は今のままでもう十分なので、IT装備や運転支援などの先進安全装備は毎年バージョンアップしてほしいし、バージョンアップしたクルマに利用料で乗り換えられる仕組みが欲しいと思う。クルマの価格でなく、利用料という概念を定着させ、毎月いくらかで乗れ、最新のモデルにも利用料アップで乗り換えられる、という販売の仕組みが確立できれば、クルマの進化のスピードアップには追い風だろう。残価設定ローンはそれに近いものだが、あくまで所有・購入が前提だし、金利も高い。クルマはどんどん進化できるとしても、売り方や使われ方が今のままでは、進化はこれまでの15年のようになかなか進まないと思えるのだが、いかがだろうか。

自動運転じゃなくても欲しくなる

さて、ヴェルファイアのような高級(高額)ミニバンが売れている理由のひとつに、かつてミニバンに乗っていた世代がまた買っているという背景があるのではと思っている。歳をとって金銭的な余裕ができた世代が高級車を買おうとした時、子や孫、みんなで乗れる高級ミニバンは悪くない選択肢だ。子育て時代にミニバンを買った世代(今の50代から60代)には、ミニバンに対する拒否感は少ない。子供の家族と3世代で楽しめる高級ミニバンはまたちょっと欲しくなるタイプのクルマだ。昔と違って、運転していても不満はないのだし。そして息子夫婦に運転させれば、自分は念願のセカンドシートで孫とくつろげるのだから。そうか、完全自動運転でなくてもヴェルファイア、欲しくなってきたかもw

 


試乗車スペック
トヨタ ヴェルファイア ZG
(3.5L V6ガソリン・8AT・FF・494万7480円)

●初年度登録:2018年1月
●形式:DAA-GGH30W-NFZRK
●全長4935mm×全幅1850mm×全高1935mm
●ホイールベース:3000mm
●最低地上高:160mm
●最小回転半径:5.8m
●車重(車検証記載値):2110kg(1180+930)
●乗車定員:7名

●エンジン型式:2GR-FKS
●排気量:3456cc
●エンジン種類:V型6気筒DOHC・4バルブ・自然吸気・直噴+ポート噴射(D-4S)・横置
●ボア×ストローク:94.0×83.0mm
●圧縮比:-
●最高出力:221kW(301ps)/6600rpm
●最大トルク:361Nm (36.8kgm)/4600-4700rpm
●カムシャフト駆動:タイミングチェーン
●アイドリングストップ機能:有り
●使用燃料:プレミアムガソリン
●燃料タンク容量:75L(4WD車の場合は65L)

●トランスミッション:8速AT
●JC08モード燃費:10.6km/L(3.5L・FF車でオプション装着により車重2110kg以上の場合。通常の3.5L・FF車は10.6~10.8km/L、3.5L・4WD車は10.4km/L)

●駆動方式:FF(前輪駆動)
●サスペンション形式(前):マクファーソンストラット+コイルスプリング
●サスペンション型式(後):ダブルウイッシュボーン+コイルスプリング
●タイヤ:235/50R18 ( Toyo Tranpath R30 )

●車両本体価格:494万7480円(メーカーオプション含まず)
●試乗車価格(概算):649万6200円(オプション込み)
※オプション合計(概算):154万8720円
※オプション内訳:ボディカラー(スパークリングブラックパールクリスタルシャイン) 3万2400円、本革シート+アクセサリーコンセント(AC100V・100W、4個) 33万1560円、3眼LEDヘッドランプ+LEDクリアランスランプ(イルミネーション機能付)+LEDアクセサリーランプ+アダプティブハイビームシステム+LEDシーケンシャルターンランプ+LEDコーナリングランプ 11万5560円、ブラインドスポットモニター(BSM)+リアクロストラフィックアラート(RCTA)+インテリジェントクリアランスソナー + T-Connect SDナビゲーションシステム+JBLプレミアムサウンドシステム 71万2800円、デジタルインナーミラー 4万3200円、12.1型リアシートエンターテイメントシステム 18万3600円、ITS Connect 2万7000円、専用フロアマット(ロイヤルタイプ) 10万2600円

●ボディカラー:スパークリングブラックパールクリスタルシャイン
●試乗距離:200km

●試乗日:2018年2月
●車両協力:トヨタ自動車株式会社

 
 
 
 
 

トヨタ 最新の試乗記10件

最近の試乗記一覧