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日産 プレーリー リバティ新車試乗記(第54回)

Nissan Prairie Liberty

1998年12月18日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

老舗ミニバン復活! 装備満載の5ナンバー乗用ミニバン

82年に他社に先駆けて乗用ミニバンとして登場した初代プレーリーは、そのあまりにも時代を先取りしすぎたコンセプトで、ユーザーに受け入れられないという苦悩を味わう(初代も左右スライドドアで、センターピラーがないため、剛性はともかく、使いやすさは抜群だったが、商用車の変形くらいにしか思われなかった)。88年登場の2代目も吹っ切れず、不運な運命をたどる。94年にオデッセイが登場して日本でもミニバンの地位が確立し、それに応じてビッグマイナーも行われたがウォークスルーもできない基本設計では、結局流れに乗れないままとなった。

今回の3代目は、5ナンバーサイズのボディに両側スライドドア、乗車定員7名の3列シート仕様という伝統を踏襲し、フラットフロア、ウォークスルーなど乗用ミニバンに求められる資質を満たした新しいクルマに生まれ変わった。ポストファミリーセダンのプレリーリバティは、ミニバンフルラインナップ化に出遅れた感のある日産の中核をなすクルマだけに、課せられた使命は大きいのだ。

先代の「ジョイ」から「リバティ」に改名された愛称は、「家族や仲間と自由気ままに行動できる」という意味を持つ。ターゲットは30代の小さな子供がいるファミリー。旦那は電車で通勤、平日は奥さんの生活の足に使われるという、大都市近郊の住宅地(例えば多摩地区あたりか)に住むファミリーのファーストカーだ。運転しやすく使い勝手の良いコンパクトなボディと、広く快適なキャビンの両立を目指している。

価格帯&グレード展開

コストパフォーマンスは抜群、価格帯は169.8~259万円

エンジンは全車、2.0リットル直4を搭載。FFはハイパーCVT、4WDは4ATが組み合わせられ、装備によってグレードのパッケージ化が図られている。ドレスアップグレードとしてお馴染みの「ハイウエイスター」もカタログモデルとして設定される。価格はFFが169.8~235万円。4WDが193.8~259万円。なお、FFにはEBD(電子制御制動配分システム)が標準装備される。

同等装備でライバルのイプサムと比較するとリバティは10万円以上も安い価格設定となっている。かなり割安感がある価格、というか、これなら買えそうという気にさせる見事な値付けだ。

パッケージング&スタイル

5ナンバーサイズのボディに両側スライドドア

典型的な乗用ミニバンのフォルムを持つボディは、全長4545mm×全幅1695mm×全高1630mmで5ナンバーサイズ。ライバルのイプサムとほぼ同等のサイズだ。ただしイプサムと異なる点は、初代モデルからこれまで受け継いできた後席スライドドアを今回も採用していること。ヒンジドアより開口部が広く、さらに狭い場所でも全開にできるという利点を持つ。それが両側なのだからさらに有り難みは増す。子供が間違って隣のクルマにエクボを作る心配もないので、ファミリーカーとしては貴重。オプションのオートクロージャーを装着すれば、お年寄りにも嫌がられないだろう(老人は閉めにくいスライドドアが嫌い)。

シンプルでカジュアルなデザインをコンセプトとする外観は、ワンモーションフォルムで前後を絞り込みボリューム感を強調したものだ。つり上がったヘッドランプを採用することでシャープな表情を演出している。でもどの角度から眺めても、車種こそ特定できないが、どこかで見たことのあるデザイン。ちょっと腰高感もあるし、スタイルに関してはいまいち。ちなみにプラットフォームはアベニールと共通。

苦節16年の成果

乗車定員は3列シートの7人乗りとなる。インパネやドアトリムのデザインを大きくラウンドさせ、3ナンバーミニバンに慣れた人でも、5ナンバーの狭さを感じさせないものとなっている。また、サイドシルの段差がないので、乗降性の良さにも気付かされるはずだ。ただし、後席のシートが理想的というよりやや高めの感じに位置しているので、少しよじ登るに感じになってしまうのが残念。

3列シートは大人にとっては頭上高に余裕はほとんどなく、シート形状もベンチタイプ。ここに乗っての長距離はちょっと遠慮したいところ。5人+2人という割り切りが必要だが、このクラスのミニバンの売れ筋はどれもこのタイプ。ライバル車と比較しても、ハンデとはならないし、主に2列乗車という使い方なら不都合は生じないはずだ。逆に3列目シートを補助用と割り切っただけに、フレキシブルなラゲッジールームを実現できている。基本的には3列目シートはダブルフォールディング機構を採用するが、レバーひとつで簡単に倒せるというのが嬉しい。座面部をフロアに収納し、さらに330mmのスライド量を持つ2列目シートを前方にスライドさせれば、24インチのジュニアマウンテンバイクが積載可能のフラットなスペースが確保される。またリアハッチには狭い場所でも荷物が出し入れできるガラスハッチも装備される。1、2列シート間のフルフラット、2、3列シート間のフルフラットなどのシートアレンジも多彩に用意される。

新採用のファインビジョンデジタルメーターは、丸く、大きく表示されるタコメーターのON/OFF機能が付いたハデなもの。子供が喜びそうだ。また、ナビ(センターの見やすい位置がGOOD)とセットオプション(22.5~29.5万円)となる「バックビューモニター」は、単に後方をモニターに映すだけでなく、画面に線が表れて車幅と障害物までの距離(3m、2m、1m、50cm)が表示される。使ってみるとこれが非常に便利。線に沿って車庫入れができ、運転がへたな主婦にも喜ばれること請け合いだ。

基本性能&ドライブフィール

シフトショックのない走りはファミリーミニバンに最適

エンジンは全車SR20DE型2.0リットル直4を搭載。トランスミッションは、2WDが駆動効率に優れたハイパーCVT、4WDが4ATとなる。140PS/19.0kgmというパワースペックは旧型と変わっていないが、低速域のトルクが向上し、触媒などの見直しにより、排気ガスもクリーン化。CVTはLEV仕様となっている。

CVTはトルコンでクリープが付いているので、普通のATとの違和感を抱くことなく扱えるもの。シフトショックのない滑らかな加速は、ドライバー以外の乗員にとっても満足できるものだ。トルクがあるため、エンジン回転と速度のズレといった違和感も少ない。微速からの加速時などに、カクッというショックが見受けられる場面もあったが、非常に注意深く走らせてみないと感づかないものであり、あえて不満箇所として指摘するまでもないだろう。また、ステアリングを握るだけではっきりとわかるほど、アイドリング時の振動は大きめだった。このあたりはもう少し洗練されていてもいいのでは。 タイヤの切れ角を多く取ったことで最小回転半径がFF車で5.3mという、イプサムの5.5mを凌ぐ数値を実現している。

いくらなんでも硬すぎる足回りは、ファミリーミニバンとしてはちょっとつらい

パワーに関しては全く問題なし。発進加速ではちょっと急発進といった感があるほど勢い良く加速する。高回転まですんなりと吹き上がり、フル乗車や登り坂でもストレスを感じることなく走らせることができるだろう。注意深く乗ればアクセル操作にワンテンポ遅れ気味のCVTならではのレスポンスが感じられるが、気にしなければほとんど違和感がない。ただ、ロードノイズやこもり音がうまく抑えられているだけに、高回転でのエンジンの騒がしさが目立ってしまうのが惜しい。

ハンドリングは、ファミリーミニバンの性格を反映させて、ややダルな味付けで女性ドライバーにとっても馴染みやすいものとしている。対して足回りは硬め。試乗車が走行300kmというバリバリの新車ということを差し引いても、この硬さだけはちょっといただけない。常に路面がゴツゴツと伝わってくるので、安っぽい走りに思えてしまう。性格からいっても、もっと乗り心地を重視した方がいいと思えるのだが。ただこの硬さがコーナーや高速巡航時の安定感をもたらす。コーナーではロールはするが下手なセダン以上の安定した走りとなり、高速150km/hでも安心していられる。シフトノブのスイッチでCVTをスポーツモードにすると、キックダウンして高速での中間加速も不満ない(ちょっとうるさいが)。全体的にはファミリーカーの割に加速や乗り心地はスポーティな印象で、その点、ちょっとちぐはぐな感じだった。

ここがイイ

非常によく考えられている室内は、ファミリーワゴンとして高得点。3列目シートはそう使われることがないと割り切ってあるため、全てのアレンジが中途半端にならなかった。3列目はリア荷室からたためるし、座面を跳ね上げておけば2列目がロングスライドするのもいい工夫。運転席の高さも手頃で乗り降りしやすいし、ウォークスルーもしやすい。

夜間でもよく見えるバックビューモニターも全てのクルマに標準装備してほしいような便利なもの。無粋なルーフエンドミラーがいらなくなったのはうれしい。

ここがダメ

乗り心地が硬かったのは個体差であって欲しいところ。その他のハード的には特に不満がなく、ファミリーミニバンとしては満点。だが、このリバティも先代同様、かなり地味。ユーザーとしての狙いは山手の30代ファミリーだが、かつてイケイケだった奥さん(CMのRIAKOみたいな)がこんなに地味なクルマに乗るのか、と思うのだが。まあそれはあくまで印象の問題であって、実際にはシビアに売れ行きに作用するとは思わないが、もう少し華があったらガンガン売れるのでは、とは思う。

総合評価

モーターデイズではエスティマエミーナに乗っているが、それと比べると、より乗用車的で、普段の使い勝手は圧倒的によい。ただ、エスティマクラスの広い空間を利用することを覚えてしまうと、リバティクラスの空間はかなり中途半端なものに思える。ブルーバードと同じ縦横サイズで、この居住空間があることは、すでにファミリーカーとしてのセダンの存在価値を喪失させているとは思う。しかし、たっぷり荷物を積んだり、キャンパー的に使ったり、何より空間の圧倒的広さを満喫したり(時に事務所的にも使います)はできないわけで、ちょっと買い替えの対象にはならない。とはいえ、まだセダンやワゴン、SUVの家庭は多いわけで、それらの人達にとって、次の幸せ計画の候補としてはオデッセイより可能性があると思われる。

公式サイトhttp://www.nissan.co.jp/

 
 
 
 
 

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