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ホンダ S2000新車試乗記(第73回)

Honda S2000



1999年05月07日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

ホンダのスポーツスピリットを結集して誕生した新世代オープンカー

1995年秋に「SSM」として東京モーターショーで、昨年9月にはついにプロトタイプとして姿を現したS2000。ご存じのとおり、ホンダ創立50周年を記念して開発された、FRの2シーターオープンスポーツカー。すでにプレス向けの試乗会も行われ、雑誌などでは発表前から大々的に公開されていたが、正式には4月15日に発売された。

「新世代リアルオープンスポーツ」をコンセプトにしたS2000は、一般道からサーキットまで、幅広いシチュエーションに対応する走りの楽しさと、高レベルの環境・安全性を追求。エンジン、ミッション、サスペンションまで全てが専用設計で、ホンダとしてはなんと29年ぶりにFRレイアウトを採用した。ボディには軽量化と高剛性を両立する新骨格構造を採用している。特に1リッター当たり125馬力の超高出力、9000回転まで許容する超高回転型の新開発エンジンは、NAにこだわり続けてきたホンダ技術の結晶と言えるもの。さらにスポーツカーでありながら、平成12年10月から施行される新排出ガス規制値クリア第1号となっている。

価格帯&グレード展開

338万円。性能と生産性を考えれば非常に安い

S2000は2リッター+6MTの、完全なモノグレード。選択できるのは6色のボディカラーのみ。オプションは2色の本革シートをはじめ、ナビ、BBS社と共同開発した6本スポークアルミ、リアスポイラーなど数多く用意されている。風の巻き込みを低減するウインドディレフレクターも用意されているが、畳んだ幌のカバーは今のところ発売されていない(今秋に発売予定)。

価格は338万円。2リッターのオープンカーというキャラクターからすれば微妙な値付けで、性能を考えれば圧倒的に安いが、サラリーマンの趣味のクルマとしては少し手が出しにくい。もちろん数売るクルマではないし、全て専用設計なのだから、ホンダ側としてもこの価格と販売台数(月販目標は500台)では利益は薄いはず。ただし発売当初は月1500台供給体制をとるという。そうはいってもリセールバリューは当然いいだろうし、300万円のお金がある人ならお買い得度は最高レベル。

ちなみに代表的なオープン2シーターの値段は、マツダ ロードスターVSが239.5万円、BMW Z3ロードスターが352万円、メルセデス・ベンツ SLKが490万円、ポルシェ ボクスターが610万円。内容と価格からみると、直接ぶつかるようなライバルはないといっていいだろう。

パッケージング&スタイル

ハイXボーンフレーム構造で軽量&高剛性ボディを実現

S2000のボディは、新開発「ハイボーンXフレーム構造」を採用し、特別な補強材を追加することなく、つまり車重を増やすことなく、2リッターのクローズドボディ車と同等のボディ剛性と車重を確保したという。エンジンは前輪車軸よりも後方に配置した、完璧なフロントミッドシップ。逆に前輪車軸より前はスッカラカンで、これが衝突安全性に大きく貢献している。バッテリー、スペアタイヤ、燃料タンクなども中心寄りで、前後重量配分は50:50を実現している。

ボディサイズは全長4135mm×全幅1740mm×全高1285mm、ワイドでショートな、いかにも走りのクルマを思わせるスペック。そしてロングノース&ショートデッキという古典的なスタイル。3ナンバーになるが、見た目はコンパクトな印象。これといって凝ったデザインではないので、多くの人から「かっこいい」と賞賛を得るだろう。特に試乗車の外板色「シルバーストーン・メタリック」は、ボディデザインによって作り出された陰影がより強調され、引き締まったボディと非常にマッチしている。

デジタルメーターは違和感無し

オレンジ基調のデジタルスピードメーターを採用したインパネは、F1のコックピットをイメージしてデザインされたもの。空調、オーディオの操作部が全てメーター周辺にコンパクトにまとめられ、スッキリとしている。オプションであるナビのディスプレイはダッシュ中央部にエグったように組み込まれ、「この手があったか」と少しだけ感心。

アルミシフトノブ、アルミパッドペダルをはじめ、ウリのひとつであるエンジンスターターボタンも演出的な効果が大きい。このボタンはエンジン作動中に押しても再びセルがかかるので、”エンジン作動中は押さないように”ということだが、それをわざわざ赤色にして目立たせているので、心理的にはついつい押したくなってしまう…?

収納スペースは、ティッシュの箱も入らない両席間のボックスと、助手席足元のネットぐらい。灰皿を取り外すと、とりあえずドリンクホルダーになると説明されているが、シフトの邪魔になるだけでまるで使えない。でもトランク容量はオープンスポーツカーとしては十分なもので、実用性は低くない。

運転席はセンターコンソールとサイドシルの張り出しが大きく、乗員をフレームで囲んだような感じのタイトな空間になる。シートのホールドもガッチリ。見切りがあまり良くなく、乗り降りもしづらい。まあ、これは生粋なスポーツカーと思えば諦めがつくだろう。幌は世界最速ともいえる6秒で開閉可能。リアウインドウをビニール製としたのは軽量化と視界面積の拡大のよるものだが、折り目がクッキリ付き、全体が歪んで見えるのはちょっと納得できないところ。ここはぜひガラスにして欲しかった。

基本性能&ドライブフィール

リッター125馬力のエンジンは”至高の逸品”

NAで世界最高のリッター125馬力を実現し、レッドゾーンが9000回転に設定された超高回転型の新開発2リッター直4・VTEC「F20C型」は、最高出力250ps/8300rpm、最大トルク22.2kgm/7500rpmを発揮する。ハイパワーでありながら、10・15モード燃費12.0km/Lを実現している点も注目に値する。さらに排ガスに関しては触媒の改善により、2000年排ガス規制値の半分以下のクリーン化を実現している。このほか、アルミパーツの多用、新開発強剛性ボディによる軽量化が、S2000の運動性能を上げるために採られた方法だ。

新開発されたクロスレシオの自社製6MTもポイントで、ごく小さなアクションできまるシフトフィーリングは最高。このミッションとエンジンだけでも買うに値するクルマと言える。

ただ、この高回転エンジンを一般道で使いこなすのは少々非現実的で、走る場所を選びそう。これがホンダらしいところなのだが。

常用域での乗り味は犠牲にされていない

最初は市街地で普通に走らせてみたが、低回転域のトルクは十分で、想像以上に扱いやすかった。低回転で走っている限り、ごく普通の乗用車的ムードなのに驚かされた。ただし、4気筒ゆえに、6気筒のような快適さはない。

乗員はフレームに囲まれた状態なので、剛性感はしっかり感じ取れる。ドアシルのトップ部分が高く、人間は完全に埋もれた印象。フロントスクリーンは見た目に反してかなり立っており、しかも短い。小柄な人がシートを前に出しても頭上の開放感が高いのは素晴らしい。それでいて風の巻き込みも少ないので、直射日光がなければオープンカーに乗っていることを忘れそう。

photo_3.jpg電動パワステは据え切りでは非常に軽く、走り出すとグッと重くなる設定で、ロックtoロックは2.4回転。ステアリングは太く、小さい。かなりレーシーなムード。さほど鋭いという感じはないが、身のこなしは軽快で回頭性は高い。後ろが流れるのを感じつつも基本的にはグリップするので、オン・ザ・レールで走ることができる。エンジン音は低くスポーティー。250馬力にはいささか不安の残る16インチタイヤとサスペンションだが、その分、乗り心地はよく、毎日の足として十分使える。

9000回転を使い切るのは困難

やはりこのエンジンのうま味は、音色が変わる6000回転くらいから上の高回転域にある。ターボ車のような力強さはないが、そこを適切なシフトチェンジでキープすれば、極めて豪快な加速をみせてくれる。シフトチェンジする度に”至福の歓び”。

ただ、市街地では十分だと感じたトルク感も、こういった時には薄さを感じてしまうのも事実。実際のところ、一般道で9000回転までを使い切るのは非常に難しい。常識的な感覚でシフトチェンジしていると、まだ2000回転も余裕が残っていたりする。さすがに高回転ではうるさくなるエンジン音を我慢し、やっと9000回転に達してシフトチェンジすると、前のクルマにつっかえてしまい、すぐにブレーキング。日常的な楽しさを考えると、もう少し低回転のトルクが欲しくなる。要するに走る場所を選ぶ。

高速ではまず風の巻き込みがないのがいい。窓を上げていれば常時フルオープンで走れる。ただ音は結構ウルサイ。クローズドにしても、さすがにクーペとは違って騒々しいのは仕方ないところ。巡航が快適なのは150km/hくらいまでで、それ以上はかなり緊張感がある。

ワインディングは非常に楽しい、と言いたいところだが、正直、かなりのハイスピードをクルマが要求してくるので、ちょっと微妙な感想になる。つまり通常のスピード域では全く安定していて、分かりやすい面白味に欠ける。とにかく安定志向。アクセルをオンオフしても挙動は緩やか。マツダ ロードスターのようなアンダーパワーなクルマをふりまわした方が、面白味は感じやすい。S2000の場合、面白いという領域はかなりの高みにある。鈴鹿あたりで思い切り走ると、きっと気持ちいいだろう。

ここがイイ

とにかく、ホンダの全てがつぎ込まれている。デザインの良さ、コンセプトの良さ、エンジンの良さ、走って良し、止まって良し、曲がって良し、オープンで良し。価格も出来から考えれば圧倒的に安い。

ここがダメ

あまりに完全なクルマであるだけに、どうも愛すべきクルマという印象には欠けてしまう。「学生時代、スポーツも勉強もでき、人間性にも優れた優等生って好きでしたか?」ちょっとそんな感じもしてしまった。唯一の欠点は、クローズド時の後方視界。構造上仕方ないとはいえ、左右後方も当然見えず、おまけにリアはビニール窓。

総合評価

photo_2.jpg考えうる、最高のオープンスポーツカーであることは間違いない。日常的には快適なオープンクルーザーとして使え、排ガスもクリーン、そしてサーキットで十二分に楽しめるポテンシャルを秘めているわけで、ホンダのメモリアルカーでもあり、その存在意義は高い。S600、S800の時代には「2000年頃までに石油燃料は枯渇するのでは」「排ガス対策はできないのでは」「スポーツカーは終わってしまうのでは」と思われていたものだが、2000年を前にしてガソリンエンジン車の「極み」が誕生し、ガソリンエンジンが生き延びていることを、クルマ好きとしては幸せに思わなくてはならないだろう。

ということで、セダンかミニバンが別にあって、屋根付駐車場があって、何より自由になるお金と時間が少しあったら、買って損がないクルマだ。いや買うべきクルマだ。そんな幸せな人は、日本には毎年5000人くらいは十分いると思うので、このクルマがNSXになることはないだろう。

公式サイト http://www.honda.co.jp/S2000/

 
 
 
 
 

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