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日産 シルビア新車試乗記(第61回)

Nissan Silvia




1999年02月12日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

FRを最大の武器とした5ナンバーに回帰のドリフトマシン

シルビアといえば日産を代表する小型スペシャリティクーペだ。かつてのナンパカーだが、いまやまったくその傾向はない。このカテゴリーでは少数派のFRを採用しているのが、現在、最大の魅力といえるだろう。つまり軟派でなく硬派なクルマの筆頭だ。

今回で7代目となるS15シルビアは、「見て、乗って、走って、エモーションを感じる軽快コンパクトなスポーティクーペ」というコンセプトで開発が進められた。肥大化した先代S14型の反省から、ボディはダウンサイジングが図られ、精悍なエクステリアを完成。プラットフォームは基本的に先代からのキャリーオーバーながら、切り詰められた前後オーバーハング、250馬力までにパワーアップが図られた2リッターターボエンジン、6速マニュアルギアボックスなどを与え、よりスポーツ性を高めている。大ヒット作の先先代S13型の夢よもう一度、という願いを込めたフルチェンジだ。

価格帯&グレード展開

価格帯は177万~260.7万円、ドリフトマシンの「スペックR」とデートカーの「スペックS」

シルビアのエンジンは2リッターのみで、250馬力(ATは225馬力)のターボモデルと、165馬力(ATは160馬力)のNAモデルとが用意される。従来、ターボモデルは「K's」、NAモデルは「Q's」というグレードが与えられていたが、今回からはそれぞれ「スペックR」「スペックS」というグレード名に変更されている(一部地域で「K's」を「カス」、「Q's」を「クズ」などと呼んでいるかららしい。そういえばS13の初期型には廉価版J'sというのもあったが、これは何と呼ばれる? )。組み合わせられるミッションは、スペックRが6MTと4AT、スペックSが5MTと4ATとなる。さらに、サイドシルプロテクター、大型リアスポイラー、フォグランプを装着する「スペックRエアロ」「スペックSエアロ」も用意される。価格帯はNAモデルが177万~216.7万円、ターボモデルが239万~260.7万円。なお、ターボモデルの6MT車には、「スーパーHICAS」が15.5万円でオプション設定されている。

NAモデルが177万円からというのは若者にとって魅力的なプライスだが、ガソリンがプレミアム仕様というのは、ちょっとイタイかも。

パッケージング&スタイル

大幅なダイエットに成功した熟成型のチューニングマシン

5ナンバーボディに回帰したS15型シルビアのボディサイズは、先代モデルのS14型よりも75mm短く、35mm狭く、10mm低い、全長4445mm×全幅1695mm×全高1285mm。これは先々代モデルのS13型よりもコンパクトなサイズだ。アンダーフロアは基本的にS14型からのキャリーオーバーのため、ホイールベースは2525mmと同じだが、前後オーバーハングを短縮することによって、ワインディングや市街地での機動性をアップさせている。 また、ねじれ剛性を約40%向上しながらも、車両重量は新旧ターボモデル比で20kgのダイエットに成功しており、開発の苦労が偲ばれるところだ。当然、動力性能に大きく貢献している。

日産製イタリアンデザイン、リアスポイラーだけは勘弁

S15のデザインを一言で表すとすれば「イタル調」。真横から見るとアルファロメオGTVのように、ウエストラインが前フェンダーからCピラー付け根に伸びていることが分かる。そしてクォーターピラーをきつく絞り込むことで、リアフェンダーのボリューム感を強調。吊り目ヘッドランプのレンズ側面には「Silvia」のロゴを入れるなど、小技も効いている。なるほど、「エレガント」とか「ダイナミック」とかの形容詞が似合うデザインである。しかしS15がカッコイイと思うのは、太りすぎたS14があまりにもカッコ悪かったためなのでは。正直、三菱FTO登場時ほどの衝撃はない。

あまり偉そうなことをいうつもりはないが、ドアパネルの処理が少し力抜けしているような気がする。また、いくらターゲットが20代の若者だからといっても、三角形のストップランプが埋め込まれたリアスポイラーはいかにもお子さま風で、納得できないところ。

ところでこれは肝心なことだが、若者達はこうしたいかにもカッコイイS15のスタイリングを素直にカッコイイと感じるのだろうか。様々なカッコよさの概念が変わってきている中、クルマだけは古典的なカッコよさにしがみついているようにも見えるのだが。

シンプルでメカニカルなインパネは、どこかで見たこともあるようなデザイン

内装も外観に負けず劣らずスポーツマインド溢れるもの。シンプルなインパネの下半部は「石風」で、センターパネルは「メタル風」、5連ベンチレーショングリル(空調吹き出し口)は「初代フェアレディZ風」、インパネ助手席側に付くSilviaマークは「ピニンファリーナ風」、シート表皮は「オレンジスェード風」トリコット、などなど“フェイク"なムードをふんだんに織り交ぜている。さらにメーター真ん中に埋め込まれる大径タコメーター、Aピラー付け根にはブースト計(スペックSは油圧計)を組み、走り屋御用達仕様。ドリフト族のハートを熟知した演出ではある。

後席をエマージェンシーと割り切り、前席2人だけの空間としたのはスペシャリティクーペとして間違っていない選択だろう。シート位置はかなり低く、足を伸ばしたドラポジとなる。全高は低いが、頭上空間は拳1個分以上あるので、閉鎖的な気分にはならない。トランクルームは決して広くないものの、後席を倒して使うこともできる(傘で押せるのが面白い)ので、2人なら十分以上の積載能力といえるだろう。

基本性能&ドライブフィール

日産の台所事情が伺える従来型エンジンは250馬力にパワーアップ、R34GT-Rを抜いたパワーウエイトレシオ

走りのメカに関しては、斬新な変化を遂げたエクステリアとは対照的で、熟成に力をいれたものとなる。

搭載されるエンジンは2リッター直4で、ターボのSR20DETと、NAのSR20DEの2本。どちらも従来どおりだが、エンジンの細部は高効率化を狙い、改良されている。特にターボは従来の220馬力から250馬力(AT車は225馬力)になり、パワーウエイトレシオは5kg/PSを達成している。これは憧れの的、R34GT-R(Vスペックで5.57kg/PS)よりも優れた数値であり、強力なアピールポイントととなるはず。また、マニュアルミッションがアルテッツァと同じアイシン製6速ということも見所のひとつだ。

一方のNAも5馬力アップの165馬力(AT車は160馬力のまま)となり、MT車では環境に優しいLEV対応となっている。NAに、日産最新ユニットの「NEO VVL、SR20VE」や「ハイパーCVT」がラインアップされていないことは少々寂しいところだが、古典的ドライブを楽しむには、ちょっと時代がかかったユニットの方が似つかわしいのかもしれない。

若者好みのスポーティなテイストが分かりやすく表現された走り、官能的なフィーリングがあれば楽しさ倍増

試乗したのはターボの6MTモデル。音に関してもチューンニングが図られており、アイドリングから図太いエンジンサウンドが鳴り響く。加速は3000回転付近からのターボトルクにより図太い力強さをみせるものの、シャープな切れ味はいまひとつ。パワーがレッドゾーン手前で頭打ちになるのが物足りないところだが、反面、低中速回転でも十分なトルクが出ているので、市街地では扱いやすい。サーキットを走っていないので実際には試していないが、その気になればドリフトに持ち込むことは簡単だろう。GT-RゆずりのヘリカルLSDも標準装備されているから、ある程度まではスピンに陥ってコントロールをなくすということもないだろう。このあたりの限界コントロール性能は、その筋の専門誌を参考願いたい。

ステアリングはやや重めでスポーティーな味付けだが、クラッチ踏力は普通。シフトは新車のせいかやや渋め。アルテッツァのような、乗って瞬時に分かるいかにも楽しげなフィーリングは無いが、パワフルな走りとサウンド、そしてFRならではのコントロール感覚は、若者好みのスポーティなテイストが実に分かりやすく表現されているといえるだろう。ディーラーで10分も試乗すれば、「これはイイ」という結果になりそうだ。むろん高速でも安定したままメーターを振り切ることは、さほど難しいことではない。

ただターボはさすがにパワーがあり、一般公道でも楽しめる? 本当のドリフトマシンは、NAモデルの方なのかもしれない。

ここがイイ

先代よりずっとかっこよくなったスタイルは○。性能的にもいうことがないところまできている。FRのクーペというとこれしかないのが現状なので、その意味では存在意義は高い。カッコのよさで売れていた180SXが廃止されたが、その層を拾い上げることは間違いないだろう。発表後半月で3000台以上を受注しており、立ち上がりの反応も悪くない。

ここがダメ

正直、乗った瞬間に楽しいという感じがなかった。ターボはマイルドだし、スピード感が希薄。しかし気が付けば凄く速いのは確か。その点、ちょっと損をしてる気がする。また昔の日産車のように、リアタイヤがツライチになっていない。エアロが決まっているだけにやや興ざめ。さらに太いタイヤを履く楽しみが残っているということか。

総合評価

ドライバーにとっては嫌味に感じられない硬い乗り味も、助手席の女性にとっては化粧直しの敵になるし、チューニングカーのような低い排気音は会話の邪魔となる。ドリフトマシンとしては評価できても、デートカーとしては失格だろう。現在のデートカーといえばRVであり、スペシャリティカーの実態はS13の時代とはすでに大きく変わってきている。メーカーはこのあたりの認識がやや甘く感じられる。スペシャリティカー=若者=たくさんのカップル、ではなく、スペシャリティカー=走り屋=少数派なので、その点では3000台の月販目標はかなり厳しいものがあるだろう。中年以降が走りを求める場合には、セダン系へいってしまうだろうし。ただ、こういうクルマを出し続けてくれる意志は素晴らしい。シェリル・クロウの歌に乗ったCFはクルマ好きにはなかなか涙モノだ。楽しいワインディングロードがあちこちにあるといいのに。

公式サイトhttp://www.nissan.co.jp/

 
 
 
 
 

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