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日産 サニー新車試乗記(第48回)

Nissan Sunny

1998年11月06日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

カローラと並ぶ日本を代表するファミリーカーの9代目

サニーといえば、カローラと並ぶ日本を代表するファミリーカーの代名詞的な存在。典型的なコンパクトセダン、いわば日本の自動車産業を支えてきた「庶民車」だ。

9代目となる新型サニーの開発コンセプトは「新・世界基準セダン」とし、「サニー」伝統のアイデンティティを踏襲しながら、社会の要請に十分応えることのできるクルマの完成を目指した。そのため、クルマの土台であり、その基本性能を決定づけるプラットフォームを新たに開発し、操縦安定性や乗り心地の向上に加え、より高い安全性の追求と環境保全への積極的な対応をおこなった。

サニーのような地味な4ドアセダンは、RVの台頭により影の薄い存在となってしまったが、相変わらずクルマの基本であり、メーカーの技術力や基本姿勢が表れるというもの。そんな意味からすれば、新型サニーは、今後、日産の戦略を占う上でも重要な地位に置かれていると言うことも忘れてはならない。なお、大衆セダン市場の縮小や車両保有期間の長期化などにより、開発コストの回収が難しくなったことにより、新型サニーのモデルサイクルは、従来の4年から6年に延長すると発表されている。

価格帯&グレード展開

価格帯は102.6~212.2万円、幅広いユーザーに対応したグレード構成

1.5リットルを主力とし、経済的な1.3リットル、余裕と走りと好燃費を両立した直噴1.8リットル、スポーティーな1.6リットルの全4タイプのNEOエンジンを用意。なお、1.5リットルには2WD用にLEV仕様とリーンバーン仕様、4WD用のノーマル仕様との3つのタイプがあり、エンジンの種類は都合、6タイプということになる。ちなみにリーンバーン仕様はLEV仕様の2万円高となる。

パッケージング&スタイル

オーソドックスでフォーマルなデザインで、車格感をアップ

伝統あるサニーの魅力として、コンパクトセダンとして扱いやすさを重視し、格調の高さを感じ取ることのできることを追求し、車両レイアウトを試みた新型サニーのボディサイズは全長4345mm×全幅1695mm×全高1415mm。先代比でいえば全長+50mm、全幅+5mm、全高+30mmと若干ながら一回り大きくなっているがホイールベースは2535mmと先代と変わっていない。

デザインは北米市場を意識した先代が日本では不評だったために、先先代の「トラッドサニー」を思わせる極めてオーソドックスなものとなった。丸みがとれ、グリルも立派になり、「価格の割に立派」的に車格感は増している。とはいえ特徴的なデザイン処理は何一つなく、地味路線はそのまま。この種のクルマは、保守的なユーザーが多いために、このくらい地味なスタイルもアリなのだけれども、まったく印象に残らないというのはちょっと寂しすぎる。聞くところによるとサニーユーザーの平均年齢はすでに50歳代後半だという。それならAピラーを立たせるとか、年配に配慮したもっとオーソドックスな設計にしてもいいと思うのだが。開発陣からは「空力抵抗とエンジン性能の向上で、1.5リットルでも最高速180km以上でますよ」というお言葉が。

これが何かちぐはぐな現在の日産を表しているようにも思えた。次期FF戦略のための新型プラットフォーム

一見、何も特徴づけるものがないと思われるが、目に見えない部分で日産の最先端の技術が数多く投入されている。その中で、最も重要な地位を占めるのが新開発されたプラットフォームだ。パワートレーン、足まわり、フロアパネルなど、クルマの土台全体をまとめた基本骨格、すなわちプラットフォームを全面的に見直したというのが大きな特徴だ。ボディ剛性を30%向上させ、操縦安定性、静粛性の向上を図っている。また衝突安全性も同時に高めることができ、プラットフォーム自体が、衝突エネルギーの約90%を負担できるようになったという(従来型は70~80%程度)。加えて、プラットフォームの構造も、縮小・延長できたり、様々なエンジンやサスペンションが搭載できるなど、フレキシブルに対応できるものとなっている。つまり新型サニーのプラットフォームは、いくつもの車種に流用でき、コスト削減につながるわけだ。これは日産が重要視している生産効率の追求を意味し、このプラットフォームが日産初のハイブリッドカーにも流用されるというのが興味深い。まあ、一般ユーザーに訴求しにくい内容(しかも50代のサニーユーザーならなおのこと)だけに、購入意欲をそそるような魅力にはなりにくい。

少しは考えているようだが、依然、平凡すぎるインテリア。質感の向上は感じ取れた

内装は品質感が大きく向上されている。インパネはセンター部が独立しており、丸みを持たせて立体感あるものとしている。オーソドックスな外観と比べると、ほんのわずかに先進性を感じさせるものだ。特にオーディオのデザインが、1DIN規格のものではなく、専用設計となっているあたりが、そんな印象を与える(カセットデッキは1DINの普及タイプ)。ダッシュ上部にはポップアップ式モニターが装着できるようになっており、非装着車は収納ボックスとして使えるようになっている。

スイッチ類や文字の大型化など、若者から高齢者まで全ての人が扱いやすいようにユニバーサルデザインという考え方を採用。また、シートは前、後席ともにヒップポイントを20mm上げ、乗降時における腰の上げ下げ量を少なくし、乗り降りしやすい構造としている。ドアの開閉量も大きくするなど、かなり頑張っているようだが、いずれも決定的な扱いやすさは実感できなかった。

前席シート側面に「ACTIVE HED REST」のタグがさりげなく付き、むち打ち症を軽減させるアクティブヘッドレストも採用されている。後席は、RVには勝てないものの、このクラスとしてはヘッドクリアランス、ニースペーストの余裕はコンパクトセダンとして申し分のないもの。何も感動しない平凡なものだが、まったく戸惑いを感じずに運転できたというのも確かであり、誰が乗っても自然に溶け込める内装だ。

基本性能&ドライブフィール

平凡なクルマだから平凡なスペック、5MTのみのスポーティーグレードもラインアップ

主力エンジンの1.5リットルは105PS/13.8kgmを発生し、このエンジンのみ4WD車がラインアップされる。また、2WD車には低公害型のLEV仕様、高燃費型のリーンバーン仕様の2タイプが用意される。1.3リットルは87PS/11.5kgmを発生。直噴ガソリンの1.8リットルは130PS/17.7kgmを発生し、5MTの他に、プリメーラと同じ無段変速機ハイパーCVTが組み合わせられる。そして新型サニーの隠し玉といえるのが「VZ-R」グレード。可変バルタイ機構VVLを採用した1.6リットルを175PS/16.5kgmを発生する。つまりパルサーVZ-Rと同じエンジン。外観ではグリルとタイヤ&アルミが専用となり、足まわりの設定も専用チューンとなる。何よりも5MTのみというのが泣かせる。カローラ6速MTのGTに対抗馬ともいえる意外なハコGTなのだ。若い世代の獲得を目的としているようだが、さて思惑通り行くのでしょうか。かなり的外れという気がしないでも…。

大衆セダンとしてバランスのいい仕上がり、無味無臭感覚のドライブフィール

試乗したのは1.5リットルエンジンを搭載したスーパーサルーン。全体のバランスはすごくよく、静粛性に関してもエンジン音、風切り音ともに見事に抑え込まれていて、明らかに1ランク上のクルマに乗っている静かさ。アクセルを踏めば、ストレスを感じさせないほどに思い通りの加速を示し、高速巡航も150km/hぐらいまでなら平和そのもの。今回から14インチタイヤなので、高速コーナリングで無理するとタイヤの鳴り始めは早いものの、決して腰砕け状態にはならず、足まわりの剛性の高さも伺える。150万円程度の価格で、ここまでの性能、上出来でしょう。

試乗の間、何も気にならなかったステアリングは適度に軽く、思っていたよりは重めといった程度。乗り心地はフワフワとまでいかない適度な柔らかさ。総じて、何の不満もない反面、何の刺激もなく、つまらないというのもこれまた確か。この無臭感覚がサニーの持ち味であり、クルマに興味のない人、またはサニ-を乗り継いできた人には、魅力的に映るとまではいかないまでも、十分満足できるはず。

安全面の見所では2WD全車に標準装備したEBD(電子制御ブレーキ配分システム)が挙げられる。

ここがイイ

いわゆるサニーもココまで良くなったかという感じ。静かで快適、広くてシートもいい。質感も悪くないし、加速もいいし、最高速も高速安定性も文句なし。もしこれが10数年前にあったなら、驚異のファミリーカーとしてもてはやされたでしょう。これで150万円ちょっと、というのは価格的にも文句なし。買いますか?

ここがダメ

何もない。買いますか?

総合評価

つまり、買いますか? という一言につきると思う。このクルマでいいという人にはもう何も不満がない素晴らしいクルマに仕上がっていると思うので、あとは買うかどうかだけ。クルマの持つ記号性というか、付加価値というか、そういった諸々の「魅力」はほとんど感じられないので、意識的にクルマを買おうとする人にはまったく論外だろう。だけど、そうじゃない人も世の中には多いわけで、カローラもサニーも一定数は売れ続けるのだ。この手のクルマは7、8年乗られるらしく、代替えは先先代からということも多いようだ。そういう人には幸せなクルマだと思う。

またどうもサニーというのはこのクルマで終わりそうな気配も感じられる。仮に現在60歳の新型サニー購入者が7、8年後にまたサニーを買うだろうか。そういう人達をターゲットにしてサニーというクルマの市場が成り立つのだろうか。モデルチェンジ予定が伸びたのも、新型サニーがこの手のクルマとしては市場性からも、完成度からもひとつの頂点(あるいはデッドエンド)に達したことを日産が認識しているからではないだろうか、と思わずにいられない。

公式サイトhttp://www.nissan.co.jp/

 
 
 
 
 

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