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トヨタ ブレイド G新車試乗記(第448回)

Toyota Blade G

(2.4L・CVT・256万2000円)

言わばオーリスの上級モデルとして
2.4L+CVTの強心臓と
後ダブルウイッシュボーンを備えた
「ショートプレミアム」の切れ味は?

2007年01月26日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

オーリスがベースの「高級ハッチバック」

2006年12月21日に発売された「ブレイド」は、言わばオーリスの上級モデル。1.5ないし1.8リッターエンジンのオーリスに対して、エスティマやRAV4用とほぼ同じ2.4リッター+CVTを搭載。さらに外装の灯火類や一部外板を変更、内装に人工スエードを多用し、質感を大幅に高めている。また、国内向けオーリス(FF車)でトーションビームだったリアサスペンションを、ブレイドではダブルウイッシュボーンに格上げしたのもポイントだ。

オーリスが欧州を中心としたグローバルカーであるのに対し、ブレイドは国内専用車。生産は関東自動車・岩手工場で、販売目標はオーリスと同じ月間3000台。なお、販売はオーリスがネッツ店、ブレイドはトヨタ店とトヨペット店が行う。

価格帯&グレード展開

オーリスより50万円ほど高い

標準車(224万7000円)と上級の「G」(256万2000円)の2グレード構成。オーリス同様、21万円高で4WDが選択可能だ。標準車と「G」の差額となる31万5000円の内訳は主に、

  • シート地(ファブリックに対して、本革&アルカンターラ)
  • ドライビングポジションの調整機構(手動に対して、電動)
  • ヘッドライト(ハロゲンに対して、ディスチャージド)
  • エアコン(普通のフルオートに対して、左右独立式フルオート+プラズマ・クラスター)
  • 天井仕上げ(普通のファブリックに対して、起毛ファブリック+LED式大型イルミネーション)

アルミホイールやスエード調インテリア(メーターフードなど)は全車共通だ。純正HDDナビは全車で30万円前後のオプション。価格帯はオーリス(162万2250円~208万9500円)より、おおよそ50万円ほど上方移行している。

パッケージング&スタイル

オーリスより少し長いだけ

ボディサイズ(オーリス比)は全長4260mm(+40)×全幅1760mm(同)×全高1515mm(同)とほぼ同じ。全長の差は言うまでもなくバンパー形状の差だ。オーリスと異なるのは、前後バンパー、前フェンダー、ボンネット、テールゲート、灯火類など。ゼロクラウン(むしろスカイラインか?)のようなL字型ヘッドランプ、クリアレンズのリアコンビランプが最も特徴的な部分だ。塗装品質もさらに高められている。

「これ、どこのクルマ?」

リアのナンバープレートは、オーリスがテールゲート配置、ブレイドがバンパー配置となる。撮影中に「これ、どこの何ていうクルマ?」と何人か(お年を召した女性)に聞かれたのは、フロントにトヨタマークが無いせいもあるが(代わりにBladeのbマーク、ちなみにオーリスはネッツ店のNマーク)、どうやらクルマに詳しくない人には欧州車のように見えるようだ。

上級グレードにはアルカンターラのシート

基本骨格はもちろん、樹脂パネル自体もオーリスとほぼ共通のインテリア。ブレイドはメーターフードや助手席正面のダッシュボードに、人工スエードを張り、高級感を高めている。特にメーターフードのスエード調は高級スポーツカーのようで嬉しい演出だ。上級「G」のシート地には、東レの高級人工スエード「アルカンターラ」と本革を使用。ダークブルーもしくは写真のアイボリーが選択可能だ。汚れが立ちやすいアイボリーだが、なかなか魅力的だ。

天井に3連LED内蔵の大型イルミネーション

天井にはマークXを彷彿とさせるLED内蔵の大型イルミネーションを配置。間接照明の白色LEDの照度がまちまちで、なぜかなあ、と思っていたら、カタログに「ドア開閉状態・シフトポジションによる3段階(高・中・低)に切り替わります」とあった。前席ではあまり意識しないが、リアシートからはよく見える。

中央席にヘッドレストと3点式シートベルト

リクライニング可能なリアシートは、広さや構造の点でおおむねオーリスと同じ。大きな違いは中央席に独立式ヘッドレストと3点ELR式シートベルトが備わる点だ。5人乗りである以上、当然の装備と言えなくもなく、カタログにも大きく謳われていない。高速道路での後席シートベルト着用義務化の噂もあるから、今後は当たり前の装備になるのではないだろうか。

荷室容量はオーリス(354L)に比べて、床下収納の関係で天地が減少し(930mm→860mm)、若干減って281L。オーリス同様、後席の折り畳みは背もたれを倒すと座面も沈み込むワンモーション・チルトダウン式だ。このアイボリー内装だと、荷室にも上級ワゴンのような上質感がある。汚れる前にトランクマットを購入したい。

基本性能&ドライブフィール

動力性能はアベンシスと互角か

試乗したのは上級の「G」だが、走りに関する部分は全車共通だ。エンジンはカムリ等でおなじみの2.4リッター直4「2AZ-FE」(167ps、22.8kg-m)だが、無段変速機とセットという点で、現行RAV4やエスティマのパワートレインとほぼ同じ。車重は前に試乗したオーリスの1.8G(Sパッケージ)より130kg重い1400kg(前軸で+70kg、後軸で+60kg)。パワーおよびトルク・ウエイト・レシオは8.4kg/psと61.4kg/kg-mで、上記オーリス(9.3kg/ps、71.3kg/kg-m)を上回るのはもちろん、車重が同じ1400kgのアベンシス(直噴2.4リッター「2AZ-FSE」+5AT)とほぼ互角となる。

実際の印象も数字を裏付けるもので、全域でトルキーなのはもちろん、エンジンを回した時のパワー感もまずまず。鋭いレスポンスやドラマチックなパワーの盛り上がり、といったものは無いが、実用的な動力性能は十分だ。エンジンとCVTとのマッチングもよく、総じてオーリスより600cc(1.5と比べれば実に900cc)増加した排気量を、「高性能」ではなく「余裕のある走り」に振り分けた、という感じだ。

圧倒的な乗りやすさ

たまたま試乗の日程がCX-7と重なったのだが、そうでなくても印象的だったのが、トヨタ車らしい圧倒的なまでの乗りやすさだ。見晴らし、見切り(ボディ寸法のつかみ易さ)、パワーの出方、滑らかな足回りなど、街乗り性能に関しては文句の付けようがない。全幅は1760mmあるので、狭い駐車場や縦列駐車で気を使わないと言えば嘘になるが、それ以外ではヴィッツ並みに気軽に乗りまわせる。

乗り心地はオーリスより明らかにソフトだが、重厚な乗り味は車重が増えたせいもあるだろう。入念な遮音対策のせいもあって、静粛性は高い。高級車並みにインナーフェンダーにフェルトを張るなど、遮音・吸音材は大幅に追加されている。

腰高感を大幅に解消

オーリス(FF車)のリアサスは一般的なトーションビームだが、その4WD仕様と欧州仕様の一部、および今回のブレイドはダブルウイッシュボーンを採用する。このオーリス/ブレイド(およびRAV4)系のダブルウイッシュボーンは、長めのトレーリングアームを持ったコンパクトなものだ。

実際にワインディングを走ってみると、オーリスにあった腰高感がほぼ解消されており、特にリアの接地性が大幅に高まっている。最終的には強いアンダーステアになるが、すでに十分速く、一般的なユーザーが操縦性に不満を感じることはないだろう。標準のVSCは意図的に強いアンダーステアを出した後、強引にタックインを誘えば介入するが、後輪側の限界がかなり高いので出番はなかなかない。

今回は200kmほどを試乗し、燃費はオーリスに試乗した時とほぼ同じ9km/L弱だった。10・15モード燃費はオーリス180G:16.8 km/L、ブレイド:13.4km/Lと約2割もの差があるが、実燃費の差はそれほどないと思われる。毎度のことながら、加減速とエンジンのオン/オフが少ない長距離通勤などで使えば、もっと燃費は良いはずだ。

ここがイイ

「コンパクトカー」に2.4リッターとは贅沢だが、このクラスには高性能ターボ車も多いから、排気量大き目のNAエンジンという手も当然ありだろう。というか、その方が穏やかな走りには適している。さらに大きなV6が載るともっといい、となるが、これはどうもいずれ実現しそうだ。

試乗したアイボリーの内装がいい。ダッシュやドアに張られた濃い色のスエードとのバランスもよく、とてもリッチな印象だ。ステアリングの本革もレクサスクラスが使われたそうで、サラッとした上質な感触。体に触れる部分が気持ちいいのは大事なことだ。さらに高さが2段階で調節できるアームレストの手触りもいい。フライング・バットレスのおかげでマニュアルシフトもしやすいし、上級グレードのエアコンは左右独立タイプだ。

欧州車並みの安全装備。オーリスではオプションだったVSC & TRC、サイド&カーテンシールドエアバッグ、そしてブレイドのみの運転席ニーエアバッグが標準装備だ。オーリスが欧州をターゲットとしている以上、ブレイドの衝突安全性もEuroNCAP対応のハイレベルにあるはず。50万円の価格差はこれら安全装備だけで心理的にかなり埋まるはず。

ここがダメ

クルマ好き、輸入車好きを振り向かせるほど、デザイン的にも広告戦略的にも洒落ていないこと。販売的にはそれが「イイ」のかもしれないが。えてしてクルマ好きが好まないクルマほど売れるものだが、今回もそのパターン。今後もそれでいいのだろうか、とクルマ好きとしては悩むところ。

オーリスでもそうだったが、室内側のドアノブがドアハンドル(ドアを閉める時につかむところ)と一体化していて、とっさに分かりにくい。ついドアハンドルをひねって開けようとしてしまうのだ。まあ、慣れで解消する部分ではあるが。

露骨なオーリスとの差別化。特に安全装備の差の付け方は、とても考えてしまう部分。安全装備はできるだけ標準にすべきだが、そうすると差別化(低価格化)ができない。安全性で商品の差別化をするのは、クルマだけの特有な現象ともいえる。「ちょっと安全ではないけど、たいした害はないし、その分安いです」という食品は存在しないのだから。

試乗車に付いていたインテリジェント・パーキングアシストはやっぱりまだ使いにくい。

総合評価

乗って10分ほどで、なんだかすっかり馴染んでしまったのは、すでにオーリスに試乗していたせいかと思ったが、どうやらそうではなく、ものすごく楽に乗れるクルマだったがゆえだ。オーリスでは1.5ないし1.8リッターエンジンを積むボディに2.4リッターを載せているのだから、トルク感はたっぷりで重厚とさえ思えるほど。それでいて鼻先の重さをそうは感じさせない。CVTとのマッチングもよく、アクセル操作と加速とのズレがないのはもちろん、普通にアクセルを踏む限りEV(電気自動車)のごとき滑らかさで加速していく。加速感を感じなくても十分速いので、心理的にとてものんびり、楽ができるのだ。

ソフトな乗り心地とオーリスよりはるかに高い静粛性が相まって、リビングルームにいるようなゆったり感を保って走ることができる。それは高速走行でも同様で、2000回転も回らない100km/h巡航からその先ずっと加速していっても、同じゆったり感がどこまでも続き、しかも静か。トヨタのよくできたセダンに乗っているような、ある意味緊張感のないクルージングが続けられる。ワインディングでは懐が深く、まあよほどひどいことをしない限り、ウデの差なしで軽快に走れる。絶対的には標準装備のVSCが助けてくれるから、VSC無しのオーリスより結果的には安全だろう。かようにすべてが楽。個性とか突出した楽しさみたいなものはないが、トヨタらしい90点(最近は80点ではない)の楽なクルマ。

ということでなんにも不満がない。ものすごく「よくできました」。以上。

だけでは、この原稿を書く意味もないので少し考察してみる。ブレイドのライバルは、国内では明確にVWゴルフだろう。今さらジジ臭いセダンに乗りたくないというチョイ悪気質を、表に出さないまでも心に秘めたおじさんたちは、試行錯誤したあげく結局、安全パイのゴルフへ流れていく。このマーケットをすくい上げない手はないと考え、ブレイドが作られたことは明らかだ。

オジさんのセダン離れが進む原因は、生活におけるフォーマルとカジュアルのバランスではないかと思う。「三丁目の夕日」の時代は、オヤジともなると基本的にフォーマルだった。普段は作業着で仕事をしていても、休日に出かけるとなればスーツである。もちろん普段からスーツで仕事の人は、出かけるときも必ずスーツ。となれば、似合うのはセダン。だからオヤジのクルマとしてセダンが売れたのだ。それはおそらく昭和の時代が終わる頃まで続いたと思う。

今はどうか。40代のいいオヤジがオフタイムにスーツで出かけることは少ないだろう。それは40代に限らず、その上の団塊世代までそうだ。仕事以外でスーツを着るオジさんはほぼいない。着ているのはユニクロかもしれないが、一応みんなカジュアルだ。国産セダンが売れない理由は、そういうところにもあると思う。団塊の世代も今後リタイアしたらどんどんカジュアルになるから、もうセダンなど買わないのは間違いない。

そうした人がセダン並みに上質で快適なカジュアルカー=上級ハッチバックを求めるのは当然だろう。これまで一度や二度はRVにも乗ってきただろうから、ハッチバックに抵抗はない。まして団塊世代は若い頃3ドアハッチバック流行の洗礼を受けた人たち。便利な5ドアハッチバックがトヨタセダン並みの快適性を備えるなら、ライフスタイルにマッチするクルマとして積極的に選ばれるはずだ。発売1ヶ月の受注で目標の2.5倍(7500台)を達成したブレイド。自動車評論家の多くは「なんだかなあ」と思っているクルマのはずだが、今後、長く売れるヒット車になると予想しておきたい。噂のV6搭載車が出れば、人気はさらに高まるはずだ。

一つだけブレイドに苦言を呈するとすれば、それは幅だろう。このワイドボディゆえにゴルフに対抗しうるというのは理解できるが、日本の駐車事情からすると、もうちょっとだけ幅の狭いものが欲しい。エスティマに対するエミーナ。ナローなブレイドだ。これはかなりの需要だと思う。昔、ルノーにサンク・バカラという豪華ハッチバックがあったが、ブレイドはコンセプトとしてそれに結構近い。ブレイドより、もうちょっと小さい豪華なハッチバック。この需要が必ず次に出てくるはず。ブレイドが売れると、今後日本版サンク・バカラが登場するかもしれないのだ。クルマ好きとしてはそれに期待したい。マツダのベリーサなどかなり近いクルマなのだが、出るタイミングがちょっと早すぎたのが残念だ。

試乗車スペック
トヨタ ブレイド G
(2.4L・CVT・256万2000円)

●形式:DBA-AZE156H(-CHXEK)●全長4260mm×全幅1760mm×全高1515mm●ホイールベース:2600mm●車重(車検証記載値):1400kg( F:890+R:510 )●乗車定員:5 名●エンジン型式:2AZ-FE ● 2362cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・横置●167ps(123 kW)/6000rpm、22.8 kg-m ( 224 Nm)/4000rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/60L ●10・15モード燃費:13.4 km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF) ●タイヤ:205/55R16( YOKOHAMA ADVAN A460 )●試乗車価格:286万5450円( 含むオプション: インテリジェント・パーキング・アシスト 2万4150円、HDDナビゲーション<バックガイドセンサー+ETCユニット込み> 27万9300円 ) ●試乗距離:約200km ●試乗日:2007年1月

公式サイトhttp://toyota.jp/blade/

 
 
 
 
 

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