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トヨタ WiLL サイファ新車試乗記(第244回)

Toyota WiLL Cypha

 

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2002年11月15日

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キャラクター&開発コンセプト

テーマは「サイバーカプセル」

異業種合同プロジェクト「WiLL」のクルマシリーズ第3弾として、'02年10月21日に発売された「WiLL サイファ」。第1弾はカボチャの馬車、第2弾はステルス戦闘機。実用性や既成概念を半ば無視したデザインが特徴の同シリーズ。第3弾のテーマは「サイバーカプセル」。'02年8月に車両に先駆けて発表されたトヨタの情報サービス「G-BOOK」を初搭載し、デザイン面より機能面での「サイバー」ぶりを特徴とする。目指すのは「ネットワーク社会とクルマとの融合」。キャッチコピーは「育てるクルマ」だ。

クルマの形をした携帯電話

センターコンソールに配置されたG-BOOKは独立した通信モジュール(KDDIの第3世代携帯電話サービス「CDMA2000 1x」端末)を内蔵。つまりこれまでのこの手のサービスのように通信に携帯電話を使う必要がなく通信速度も速い。その通信スピードは最大144kbpsとH"(PHSのエッジ)並み。しかも独立した通信モジュールゆえ、今後のバージョンアップ(載せ換え)も可能となる。ここは画期的なところだ。トヨタが運営する専用サイトから各種情報を引き出すことが出来るほか、eメールの送受信が可能。利用料金も月550円(年払い6,600円の場合)からと、携帯のオプション機能並みに安い。定額制なので「使い過ぎ」の心配もない。似たようなものとして日産のカーウイングスがあるが、トヨタは「通信の安定性、操作の簡単さでG-BOOKが優位」と訴える。

また、コンビニやガソリンスタンドに設置された端末「E-TOWER」などから付属のSDメモリーカード(256M。CD-Rの半分程度)に最新地図や市街地図の追加、音楽やゲームのダウンロードも可能だ。G-BOOKはもちろんカーナビになり、その全国版の地図はSDメモリにあらかじめ入れられて販売される。この地図はコンビニの端末で書き換えることができるという点で、あらかじめDVDディスクを配布するホンダとはひと味違う仕組みだ。

G-BOOK普及に向け、車両価格はG-BOOK付で126万円(2WD車)と低価格。さらに、クルマの新しい買い方として、携帯電話と同じような感覚でユーザーが月々の走行距離に応じてリース料金を支払う、走行距離課金型リース「P-way」もスタート。トヨタとしては「クルマのローンは払いたくないが、携帯電話の通話料には2万円も3万円も使う」若いユーザーに訴求しようというもの。ただし、実際にはこのリースの利用者は10%にも満たないと踏んではいるようだ。とにかくサイファ+G-BOOKは利用ユーザー数、採算などほとんど未知数という様々な試みとともにリリースされた、21世紀に向けた先行投資・実験型モデルといえるだろう。

1,500台/月の意味

WiLL サイファの生産は、ラウムやMR-Sなどの開発・生産を請け負う、セントラル自動車株式会社(神奈川県相模原)の本社工場が行う。目標台数はVi、VSと同じ1,500台/月となかなか意欲的。実験車的な色合いは前の2台よりもずっと強いが、それゆえもしこれだけの数が売れたら、その意味はちょっとしたヒット車とは比べものにならないほど大きいはずだ。

価格帯&グレード展開

1グレードのみ。2WDと4WDがある

WiLL サイファのグレードは1種類。ラインナップは1.3リッター・2WD(126万円)と1.5リッター・4WD(148万円)の2種類と超シンプル。こんな実験的なモデルにもちゃんと4WDを用意するところがトヨタらしい。オーディオ(CD・MDチューナー+6スピーカー)は5.1万円のオプション。全車4速ATとなる。

タダでG-BOOKとナビが付いて来る!?

サイファの2WD仕様に近いイストのF“Lエディション”(1.3リッター、オートエアコン仕様)は「素」の状態で130万円。オプションのDVDボイスナビを付けると、なんと151.3万円! つまりサイファを買うと、ほとんどタダでナビとG-BOOKが付いて来る、と言っても過言ではない! ヴィッツの場合でも、内容の近いU・5ドアで126万円。これにCDないしDVDのナビをオプション装着する形となり、どうやってもサイファより高くなってしまう。

こうなるとサイファを見て「ちょっとカッコがなあ」と思った人も、目をつむって?買おうか、という気になる、かどうかはともかく、G-BOOKを広めたいという意思がはっきり見える価格付け。もしデザインが気にいったなら、かなりお買い得と言える(G-BOOKがどうしても要らないというなら別だが)。ライバルをあえて挙げるなら、やはりカーウイングス装備の日産マーチあたりだろう。

パッケージング&スタイル

SF映画よりSFチック

蛍光イエロー(実際は明るいソリッドイエロー)のWiLL サイファをはじめて見た時は思わず「ウワッ」と声が出た。色も色だが、その形のインパクトは強烈。WiLLシリーズの先達2台より「自動車」らしくないという点では明らかに上回る。「近未来のシティ・コミューター」を意図したというデザインは確かにSF映画に出てきそうなカタチ。ボディのチリ合わせがビシッと決まっている点が下手な映画用小道具とは違うところ。

クルマ版AIBO

ヴィッツベースであることを感じさせない大胆な造型は「お手軽な」な感じ一切なし。イストやWiLL Viよりも見方によっては「ヴィッツっぽさ」がなく、気合いの入り方がうかがえる。

全体のフォルムは自動車版AIBOを狙ったと思しきカワイイ系路線。そこにガンダム路線の縦4連ライトがややミスマッチか。ソニーのAIBOをすかさず注文するような人なら、抵抗ないデザインかもしれない。いずれにしても、素晴らしくよく出来た遊園地の乗り物のような外観のクルマに、最先端の情報端末を載せて100万円そこそこで売られてしまう現実は、まさにデフレ最中の、クルマ&携帯メール先進国の日本ならでは。

ソリッド原色系カラー1本で勝負(ホントは銀もあるけど)

テーマカラーであるイエローは正式にはKI(ケイ・アイではなくキ=黄) と日本名であるところも、なんとなく「ブレードランナー」的にサイバー? GIN(シルバー)を除き、全て絵の具の原色のようなソリッドカラーとなる。形も機能も冒険したから、ついでに色でも冒険しちゃえ、という思い切りを感じさせる。

内装の質感はイスト並みか

シャーシ、サイズがほぼ同じであるからして、室内空間もほぼヴィッツと同じ。ただし、センターコンソールにデンと据えられたG-BOOKやサイバー感を盛り上げる薄いブルーのメタル調パネル、ブラック基調の内装や専用ファブリックのせいで、質感はイスト並みかそれ以上に高く感じる。シート骨格はヴィッツとまったく同じというが、クッションやファブリック素材が代えられたことで、ずいぶん座り心地がよく感じられる。ただ後席は座り心地は悪くないものの、ヴィッツよりやや小降りだ。

斬新なデザインもとても実用的。デジタルのメーター類も見やすく、空調などのスイッチ類もよく整理されていて、何の不満もない。小物入れもヴィッツほどではないが充実している。ダッシュボードにビルトインされたドリンクホルダーが使いやすく、見た目もスマート。

基本性能&ドライブフィール

軽いフットワークで街乗りが得意

試乗車は1.3リッター・2WD仕様。オプションのオーディオ込みで131.1万円。グレードやオプションの選択肢がほとんどないだけに、この仕様が雪国を除き一般的だろう。

1.3リッターエンジン(2NZ-FE)はヴィッツ等でおなじみ。パワーも87ps/6,000rpm、12.3kgm/4,400rpmとまったく同じ。同仕様のヴィッツより約60kg重く、イスト(1,000kg)とほぼ同じ990kgのボディを軽快に走らせる。この1.3リッター、走りでは1.5リッターに負けると思いがちだが、街乗りではそうでもない。基本的に1.0リッターエンジンと共通の低いギア比のATとセットになるので、出足は1.5リッター車より明らかに軽快なのだ。もちろん、速度が上がってしまうと1.5が優位となる。いずれにしても街乗りメインなら、ヴィッツ系は1.3に限ります。

静かさはG-BOOKのため

静粛性はヴィッツより明らかに上で、おそらくイスト並みか。試乗車のSDカードには流行りのJポップが何曲かダウンロードされており試しに聴いてみたが、音質はとてもクリアでCDにまったく遜色ないレベル。こうしたオーディオ機能に加え、G-BOOKのボイスコントール機能を活かすためにも遮音には気を使ったのだろう。無料コンテンツの一つである最新のNHKニュースの自動読み上げ機能(他に、天気や株式相場などがある)も、いかにもコンピュータがしゃべっているという音声ゆえ、それなりに楽しかった。

乗り心地よし、安定性よし

トヨタ車であるからして、乗り心地は悪いはずがない。かと言ってソフト一辺倒でもなく、山道でもちゃんと安定して速いペースが可能。サスは欧州仕様となっている。ヴィッツのRS系に標準装備される175/65R14タイヤは、クルマの性格とシャーシ性能に見合った感じでベストバランスだ。 最高速はメーター読み159km/h。ただそんな高速域では大変うるさくなるし、風切り音も大きめ。中間加速もいいとはいえないが、1.3ならこんなものか。

とはいえ意外にも、と言っては変だが、総じてWiLL サイファは「クルマとしての機能」がまったくオロソカにされていない。ある意味では、ヴィッツの正常発展型というかリファイン版とも言えるのでは、と思える。発表時、開発の人は「後から出してますから、良くなってるのは当たり前です」と言っていたが、まあそうとばかりは言い切れないクルマもある。その点サイファは、ヴィッツから乗り換えてもいいか、と思わせるだけのクルマとしての進化がある。イストもヴィッツ乗り換え派の受け皿だが、サイファもクルマとしての部分では十分それに値すると思う。

ここがイイ

何はなくとも本格的な自動車向け通信システムがスタートしたこと。そしてそれがウインドウズ CE for Automotiveベースの(一応)オープンなシステムであること。これによって、様々なコンテンツプロバイダーが参加できるようになり「異業種複合型の多彩なサービス展開を実現しており、一般企業の参画を幅広く受け付ける(トヨタ)」。その一例がカラオケ。音がよく、曲も自由に選べる通信カラオケでの歌の練習が、走りながら車内でできる事はすばらしい(と思うのは私だけ?)。

ここがダメ

やはり通信速度がいまいち。少し待たないとコンテンツが見られないのは初期のインターネットみたいだ。さらに現在のコンテンツには今ひとつ魅力がない。見たいコンテンツ、便利なコンテンツがまだまだ少ないし、内容も薄い。何よりインターネットが見られないのは残念至極。

最新情報がとれるはずの通信なのに、データベース側の情報更新が追いついていない(リアルタイムになっていない)模様。例えば地図につぶれたガソリンスタンドが掲載されていたり、引き出したショップ情報の店がクローズドしていたり。リアルな通信環境ができるほど、リアルなデータベース作りが必要となるが、ここのインフラづくりはまだ課題が多いようだ。

クルマを止めてG-BOOKを操作していると、ついつい時間がたち、冬場では室温も下がってくる(当然夏は暑いだろう)。したがって、アイドリングしたまま、操作することになり、あまり環境にいいとはいえない。サブバッテリーなど、エンジンを止めていてもG-BOOKが存分に使える装備が欲しい。

総合評価

前述のようにクルマとしてはヴィッツの正常進化型で特に不満はない。したがってここではやはり試乗時間の大半を費やしたG-BOOKについて少し長くなるが書いておこう。

まずクルマを始動するとトップ画面が出て、ここでユーザーを指定する。もちろんタッチパネルだ(ウインドウズCEではスタイラスを使うが、G-BOOKは指でいい)。トップメニューから必要な情報へはワンクリックずつで進んでいく。そのたびに数秒の通信待ちとなるのは、ブロードバンドを知ってしまった人にとっては辛いものがあるだろう。このあたりの操作感は、G-BOOKの前身であるMONET(通信手段は携帯電話なのだが)と大きく変わらないようにすら感じてしまった。

ニュースや交通情報といった定番コンテンツは手間をかけてダウンロードしておけば、時々変なイントネーションになるものの、読み上げ機能は十分実用的で走りながら楽しめる。コンピュータ合成音声らしいサイバー、かつかわいい声は最近のDVDナビのプロナレーター風の声より好感が持てるもの。

ドライブ上一番欲しいと思われるショップ情報は、例えば「ラーメンの達人」「ラブホ?ナビ」と言うコンテンツがあるように、そそるタイトルがついているものの、検索してみると、情報の少なさ、内容の浅さにやや失望。潰れたラーメン屋が出てきたりするのは残念至極。情報取得料が無料だからまだいいものの、有料だったらムカッときそうだ。

情報は、雑誌などに掲載された過去の情報をまとめて載せるのではなく、それをリアルに更新していくことがもっとも重要。たとえラーメン情報程度のことにしても、全国規模でそれを成立させることは、たいへんであることはもちろん、膨大な経費がかかるはず。そうした情報整理をどうしていくか、が今後の大きな課題となるだろう。

ただし、それができた暁には、課金がリアルタイムかつ簡単なだけに(G-BOOKは申し込み時に有料コンテンツのクレジット決済が可能な仕組みが作られている)ビジネスとして成立させられることが予測される。むろんG-BOOKはPCからも見ることが可能で、電子決済の理想的な形態を構築できるわけだ。ちなみにパソコンではG-BOOKと同じ画面がブラウザに現れる仕組みとなる。これはG-BOOKがHTMLのバリエーションであるG-BOOK-MLと言う言語で書かれているから。ウィンドウズ(CE)とHTMLによるコンテンツという点では、パソコンのインターネットと同じ仕組みだ

しかしながら、G-BOOKでは通常のwebページは見られない。現実的にはこれが最大の不満だ。表向きにはセキュリティの問題とされるが、勝手サイトが増えては囲い込みができなくなる、と言うのが大きな理由だろう。一見オープンな仕組みに見えながらも、実はしっかりクローズドされている。すべてとは言わないが、オープン領域をぜひ拡張して欲しい。またwebの閲覧だけは何とか可能にしてもらいたいものだ。

クルマがネットにリアルにつながっていることにはどんな意味があるか、と言う問いにはこういう返答がある。「リモートメンテナンスサービス」や「マイカーダイヤリー」だ。走行距離がディーラーへ送られ、自動的にメンテナンス時期がメールされてくる。やがてはクルマの不都合が自動的にディーラーへ送られるようになるだろう。整備記録はネット越しに登録が可能。セキュリティ面でも「どこだよマイカー」なら現在のクルマの所在地がネットで見られるし、「ロードアシスト24」なら事故っても位置情報付きのSOSが発進できる。「るすメイト」では自宅の監視カメラをクルマの中から見られる。こうした緊急の場合は「オペレータサポートサービス」を使うと、携帯電話をつないでハンズフリーの音声対話が可能だ(緊急じゃなくてもオペレータは使えるが)。音声と言えば、音声認識機能ももちろん搭載していて、学習させれば(あるいは自分が学習すれば)タッチパネルでなく音声でG-BOOKをコントロールできる。

さらにはユーザーカスタマーサーバーというユーザー向けweb領域を使ったパソコンやPDAとの連動、コンビニに設置されたE-TOWERという端末とSDカードを使ったデータ更新など、よくぞここまで広げたものと思えるほど、ハードウェア(インフラ)は整備されている。あとは本当にソフトウェア(コンテンツ)が充実し、さらに通信速度が向上すれば、現在の「絶対的に支持するが、相対的には買いたくはならない装備」という印象が変わってくるはずだ。何はなくとも利用したいという場合は、サイファなしでもインターネット上で多くの機能が使えるG-BOOKライト(月額利用料200円)を申し込もう。詳細は http://g-book.com にある。

「こうした総合的なサービスのすべてをうまくまとめ上げることがポイントだった」と2年半開発に携わったスタッフは言う。サイファ自体は夏までに出来ていたようだが、G-BOOKの準備が遅れてこの時期の発売となったようだ。「G-BOOK端末をポータブル一体化して、いろんなクルマに後付出来ないか」と問うと、不可能ではないがまだ時期ではない、と言う返答だった。サイファは月1500台の販売予定で、これはつまり月1500人ずつしか利用者が増えないと言うこと。これくらいの増加であれば、システムがダウンすることもないだろう、というあたりが本音のようだ。

1500人で利用料月550円ということは月額売上85万5000円。一年たっても月1000万円足らずの売上にしかならない事業に、いったいいくら注ぎ込まれたのか、と考えると、トヨタのこの事業にかける姿勢が分かるはず。クルマは移動手段から情報端末に変わるという確信があるからやれるのだとおもう。21世紀初頭のエポックメイキングな工業製品は「ソニーからAIBO、ホンダからASIMO、トヨタからCYPHA」と歴史に記録されるだろう。


≫関連サイト:G-BOOK

トヨタ WiLL サイファ(1.3リッター 2WD)
●形式:UA-NCP70●全長3,695mm×全幅1,675mm×全高1,535mm●ホイールベース:2,370mm●車重:990kg(F:610+R:380)●エンジン:1,298cc・DOHC・横置き●駆動方式:前輪駆動●87ps/6,000rpm、12.3kgm/4,400rpm●10・15モード燃費:18.0km/L●タイヤ:175/65R14(BS B391)●価格:126万円(試乗車:131.1万円 ※オプション:CD/MD一体チューナー&6スピーカー)

公式サイトhttp://toyota.jp

 
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