ジャガー XE新車試乗記(第773回)
Jaguar XE
(2.0L 直4ガソリンターボ・8速AT・477万円~)
2015年10月23日
キャラクター&開発コンセプト
アルミ製モノコックの最小・最軽量ジャガーサルーン
「XE」は、ジャガーが新たにDセグメントに投入する新型4ドアセダン。2014年9月8日にロンドン・アールズコートでデビューし、同年10月にパリ・モーターショーで詳細を発表。日本でもほぼ同時に予約受付が始まり、デリバリー自体は2015年9月頃から本格的に始まっている。
間接的にはXタイプ(2001~2009年)の後継モデルだが、Xタイプがフォード傘下において、フォード モンデオとFF(前輪駆動)ベースのプラットフォームを共有したのに対し、XEは現在タタ傘下にあるジャガー・ランドローバーが独自開発した軽量モノコックボディ(重量比で75%以上にアルミ合金を使用)のFRモデルに進化。ジャガーの4ドアセダンで史上最軽量を謳う。
その軽量ボディは、ジャガー・ランドローバーが新開発したアルミ合金製の軽量モジュール車体構造によるもの。このモジュールはXEを皮切りに、2015年9月のフランクフルトショーで発表されたジャガー初のSUV「F-Pace」、そして2016年モデルの次期XFにも採用される。
日本向けジャガーで初のディーゼル車も
ガソリンエンジンについては、現行ジャガー(XF、XJ)やランドローバー(イヴォークなど)にも採用されているフォード由来の2.0L直噴ターボエンジンや、Fタイプ等と同じ自製の3.0L V6スーパーチャージャーエンジンを採用する。
注目は新開発のディーゼル。ジャガー・ランドローバーが開発した2.0L「Ingenium(インジニウム) 」ディーゼルターボは、尿素SCRでNoxを還元してユーロ6をクリアするもので、日本でも2016年から導入される予定。日本向けジャガーでは初のディーゼル車になる。
さらにガソリンエンジンについても、ディーゼルのインジニウムと基本設計を共有するガソリン版を開発中で、そちらは2016年に生産が始まる予定。
XEの生産(ボディ製造・最終組立)は、英国ウェストミッドランズ州ソリハルにあるジャガー・ランドローバー工場内の新施設で行われる。また、新世代「インジニウム」エンジンは、同州ウルヴァーハンプトンの新エンジン工場で生産される。
【外部リンク】
ジャガー>F-Pace
ジャガー>XF
価格帯&グレード展開
477万円からスタート
2015年6月に受注が始まった日本向けカタログモデルは、ガソリン車が4グレード、ディーゼル車が3グレードの計7グレード。ミッションは全てZF製の8速ATになる(欧州仕様には一部に6MTもある)。
ガソリン車は、2.0L直4ターボの200ps版(PureとPrestige)、240ps版(Portfolio)、そして340psの3.0L V6スーパーチャージャー(S)の3種類。なお、初期導入車は、Prestigeがベースの「First Edition」(558万8000円、限定400台)、そしてファブリックシートのPureをベースにした「Advantage Edition」(488万円、限定200台)が主力になる。
ディーゼルの2.0L 直4ターボモデルは、2016年1月に上陸する予定。
■2.0L 直4ガソリン・ターボ・8AT
・Pure (200ps、320Nm) 477万円
・Advantage Edition ( ↑ ) 488万円 ※限定200台
・Prestige ( ↑ ) 515万円
・First Edition ( ↑ ) 558万8000円 ※限定400台
・Portfolio (240ps、340Nm) 642万円
■3.0L V6ガソリン・スーパーチャージャー・8AT
・S (340ps、450Nm) 769万円
■2.0L 直4ディーゼル・ターボ・8AT
・Pure (180ps ※) 497万円
・Prestige ( ↑ ) 535万円
・R-Sport ( ↑ ) 549万円
※欧州仕様
パッケージング&スタイル
軽量アルミボディの4ドアクーペスタイル
XEのデザインを手がけたのは、フォード出身の英国人で1999年からジャガーのデザインディレクターを務めるイアン・カラム。外観はロングノーズ、ロングホイールベース、ショートデッキ、ロー&ワイドの4ドアクーペ風。個性やインパクトは控えめながら、滑らかな線と面で構成されたスタイルは無駄がなくて美しい。Cd値はジャガー史上最高の0.26とのこと。
前述の通り、ボディは75%以上がアルミニウム合金製。XJやFタイプのような“オールアルミ”ではないが、いわゆるハイブリッドボディ(アルミ・スチールの混成)のライバル車よりアルミ使用率は段違いで高い。
大きさはライバル車と互角
ボディサイズは、全長4680mm×全幅1850mm×全高1415mm、ホイールベース2835mm。3シリーズより一回り大きく、ISやCクラスと比べると全長は同等ながら、全幅は40mmほどワイド。ドイツで先日発表された次期A4(B9型)とは、ほぼ同等。
ちなみに2016年モデルの次期XFは、全長がほぼ5m(4954mm)、全幅はほぼ2m(1987mm)と、XEより一回り以上大きい。その上には、フラッグシップのXJがある。
全長(mm) | 全幅(mm) | 全高(mm) | WB(mm) | 最小回転 半径(m) |
|
BMW 3シリーズ(2012~) | 4625 | 1800 | 1440 | 2810 | 5.4 |
レクサス IS(2013~) | 4665 | 1810 | 1430~1460 | 2800 | 5.2 |
ジャガー XE (2015~) | 4680 | 1850 | 1415 | 2835 | 5.5 |
メルセデス・ベンツ Cクラス(W205型、2014~) | 4690~4715 | 1810 | 1435 | 2840 | 5.1 |
アウディ A4 (B8型、2008~) | 4705~4730 | 1825 | 1420~1440 | 2810 | 5.5 |
アウディ A4 (B9型、2016~) | 4730 | 1840 | 1430 | 2820 | - |
日産 スカイライン (2014~) | 4790~4800 | 1820 | 1450 | 2850 | 5.6~5.7 |
トヨタ クラウン (2012~) | 4895 | 1800 | 1450~1460 | 2850 | 5.2 |
ジャガー XF(2016~) | 4954 | 1987 | 1457 | 2960 | 5.8 |
ジャガー XJ(2010~) | 5135~5260 | 1900 | 1455 | 3030~3155 | 5.8~6.0 |
インテリア&ラゲッジスペース
英国製スーツのように
イアン・カラム自身、スポーティなスタイリングをタイトなパッケージングで実現した、と説明するように、XEのキャビンは広さよりスタイリング、そしてクルマとの一体感を重視したもの。室内幅は「ひょっとして軽自動車並み?」と思えるタイトで、左右ドアからダッシュボードにかけては、深くえぐれた形状が弧を描いて前席を囲み、そのタイト感をいっそう強調する。天井もクーペのように低い。
しかし少なくとも前席に関しては、不思議と圧迫感はそれほどない。ファッション誌風に言えば、まるで英国製スーツのように乗員の体にフィットする。
座ってしまえば意外に快適
後席は天井が低く、特に側頭部には若干の圧迫感がある。ただし厚みのある座面クッションが太ももをしっかり支え、フットルームも広く(前席下に足首から先がすっぽり入る)、背もたれの角度も適切なので、座り心地は悪くない。一つ気になるのは、乗り込む際に頭をかなり意識して屈めないと、ルーフに当たってしまうこと。
基本性能&ドライブフィール
2.0L直噴ターボ車(200ps)に試乗
試乗したのは2.0L直噴ターボ(200ps版)を搭載する「First Edition」。カタログモデルで言うと、「2.0 Prestige」のオプション装着車に相当する。
スタートボタンを押すと、スターターモーターの「ククッ」という小気味いい音と共にエンジンが始動し、例のロータリー式ドライブセレクターがせり上がってくる。エンジン音は特に静かではないが、SのV6スーパーチャージャーに比べれば、ぐっと大人しい。
トランスミッションは、今や欧州車のFRモデルで定番のZF製8速AT(8HP45)。ステップ比が小さいため、変速はスムーズで、ロックアップによるダイレクト感も上々。アイドリングストップからの再始動時にショックが出るのは気になるが、やはりトルコン多段ステップATは乗りやすいなぁと、あらためてその良さを実感する。
回せばパワフルだが、トルク感はもう少し
一般道を流す時、エンジンは1400rpm~2000rpmあたりで粛々と回っているが、アクセルを踏み込めば一気に上まで回り、200psという額面通りのパワーを発揮。ロータリーシフターを回して「DS」(スポーツモード)を選べば、高回転を維持して俊敏に反応するし、「ジャガー・ドライブ・コントロ-ル」(パワーステアリング、スロットルマッピング、シフトプログラムを変更)で「ダイナミック」を選べば、反応がよりシャープになり、レブリミットに達しても自動シフトアップしなくなる。
なお、この2.0Lガソリンターボはフォード由来のユニットで、ボア×ストローク:87.5×83.1mmのショートストローク型。じっくり観察すると2000rpm以下のトルクはやや薄い。
ハンドリングと乗り心地は、まさにジャガー
走り始めた瞬間にいいぞと思うのは、ジャガー初の電動パワーステアリング(EAPS)によるスムーズで軽快なステアリングフィール。普段は軽く、コーナーではやや重く、という具合に変化を意識させるところに、まだこなれてない感はあるが、切り込んだ時の剛性感が高く、とても気持ちいい。
ちなみに電動パワステ化の副産物として、縦列駐車や並列駐車時にハンドル操作を自動でやってくれる「パークアシスト」も試乗車には装備されていた。
そしてボディはガチッとしていながら、絶妙ないなし感があり、その下でフロントがダブルウィッシュボーン、リアが新開発のインテグラルリンクとなるサスペンションがきっちり動く様子がリニアに伝ってくる。そして不快な突き上げや振動は一切伝わってこない。このあたりは、XJやXKで長年アルミボディをやってきたジャガーならでは。
ちなみにXEのボディは、主に6000系と呼ばれる高強度アルミニウム合金製だが、一部に再生アルミニウムの含有率が高い「RC5754」と呼ばれる高強度アルミニウム合金も採用。再生アルミニウムの製造に必要な電力は、新品時の5%とのこと。また、バンパービームなどの一部パーツは鋳造マグネシウム製で、リアのアンダーボディ、ドアパネル、トランクリッドなどはスチール製。部材の接合には、ジャガーが先代XJから採用しているSPR(セルフ・ピアシング・リベット=自己穿孔リベット)と構造用接着剤を使っている。
車重は試乗車で1600kgと特別に軽いわけではないが、走らせると確かにライトウエイトスポーツ風に身のこなしが軽い。前後重量配分も52:48(試乗車)と、ほぼ前後イーブン。試乗車のシートがフルレザーで、コーナーで体が滑ってしまうのには困ったが、それを除けば山道もスポーティに走り抜けてくれる。ハンドリングは掛け値なしに素晴らしい。
なお、センターコンソールには、クルーズコントロールのような絵のついた謎のスイッチがあるが、これは新開発の「ASPC(オール・サーフェス・プログレス・コントロール)」なるもの。雪道などの滑りやすい路面で、車速を設定速度(3.6~30km/hの範囲内)に自動制御することで、走破性を確保するもので、言うまでもなくランドローバーの技術が転用されたものだろう。ドライバーをステアリング操作に専念させるという発想は、トヨタ ランドルクルーザー等の「クロールコントロール」、ランドローバーの「オールテレイン・プログレス・コントロール・システム(ATPC)」に近い。
100km/h巡航は1800rpm。最高速は237km/h
100km/h巡航時のエンジン回転数は8速トップで約1800rpm。直進安定性や静粛性はまったく申し分ないと感じた。
ミリ波レーダーを使ったACCに加えて、ステレオ・カメラで前方を監視し、80km/h以下で衝突を回避あるいは衝突被害を軽減する自動緊急ブレーキ(AEB)やレーンデパーチャー・ウォーニング(車線逸脱警告)は全車標準になる。
動力性能(メーカー発表値)は、試乗した2.0Lガソリンターボ(200ps版)が0-100km/h加速7.7秒、最高速度236km/h。2.0L ディーゼルターボはそれぞれ7.8秒、228km/h。2.0L ガソリンターボ(240ps版)は6.8秒、250km/L。3.0L V6 スーパーチャージャーは5.1秒、250km/h(リミッター作動)。
試乗燃費は9.2~16.0km/L。JC08モード(200ps版)は11.8km/L
今回はトータルで約220kmを試乗。参考ながら試乗燃費は、いつものように一般道と高速道路を走った区間(約80km)が9.2km/L。一般道を大人しく走った区間(約30km)が12.0km/L。高速道路を80~100km/hで走った区間(約90km、アップダウンあり)が16.0km/Lだった。
JC08モード燃費は、試乗車が11.8km/Lで、2.0Lターボの240ps版は12.5km/L、V6 スーパーチャージャーは10.4km/L。指定燃料はもちろんハイオクで、タンク容量は63L。ディーゼルのモード燃費はまだ発表されていない。
ちなみにライバル車のJC08モード燃費は、以下の通り(2015年10月現在)。ドイツ勢はおおむね優秀だが、実用燃費(特に高速燃費)なら、ここまでの差はないかな、という印象。
・メルセデス・ベンツ C180 (1.6L ターボ、156ps)…17.3km/L
・メルセデス・ベンツ C200 (2.0L ターボ、184ps)…16.5km/L
・メルセデス・ベンツ C250 (2.0L ターボ、211ps)…16.0km/L
・メルセデス・ベンツ C450 (3.0L SC、367ps)…12.0km/L
・BMW 320i (2.0ターボ、184ps)…15.4km/L
・アウディ A4(B8型) 2.0 TFSI (2.0ターボ、180ps)…13.8km/L
・アウディ A4(B8型) 2.0 TFSI クワトロ(2.0ターボ、211ps)…13.6km/L
・トヨタ クラウン 2.0 アスリート-T (2.0ターボ、235ps)…13.4km/L
・レクサス IS200t (2.0ターボ、245ps)…13.2km/L
・日産 スカイライン 200GT-t (2.0ターボ、211ps)…13.0~13.6km/L
ここがイイ
軽快なハンドリング。量産アルミボディ
ジャガーへの期待を裏切らないハンドリング。高いボディ剛性、軽量設計、50:50に近い前後重量配分、ステアリングの剛性感、ほどよい設定のサスペンションなどなど、シャシーに関しては文句なし。初物のプラットフォームとは思えないほど完成度が高いのは、ひとえに基本設計がいいからだろう。ジャガーのハンドリングに対するこだわりが確かに実感できる。
ここがダメ
ジャガー・ドライブ・コントロ-ルの操作性。低回転域のトルク感。レザーシートのホールド性
走行中に「ジャガー・ドライブ・コントロ-ル」が操作しにくい。Snow、Eco、Normal、Dynamicと4種類あるが、ボタンを押して直接選ぶのではなく、矢印ボタンで移動させて選ぶタイプ。スポーティに走る場合はロータリーシフターをDSにすれば済むので、それほど使用頻度は高くないが。
2.0Lターボ(200ps、280Nm版)は低回転域のトルク感が少し物足りない。V6 スーパーチャージャーほどのパワーは要らないから、もう少しトルク感が欲しいところ。その点では新開発の「インジニウム」ディーゼルや、そのガソリン版が待たれる。ちなみにインジニウムは、ボア×ストロークが83.0×92.4mmのロングストローク型になる。
試乗した2.0Lターボの場合、アイドリングストップからの再始動で少しショックが出る。アイドリングストップ機能はオフにできるが、エンジン始動ごとにオンになってしまう。今回は試乗しなかったが、V6モデルだと再始動時のショックはもっと小さいようだ。
試乗したFirst Edition(限定400台)や、Prestigeのフルレザーシートだと、コーナーで体が滑ること。R-Sport(ディーゼル)やS(V6ガソリン)のセミバケットタイプならいいかもしれない。フルレザーにこだわらないなら、Advantage Edition(限定200台)やPureのクロスシートもありかも。
総合評価
フォード傘下のデザインは……
2001年に日本で発売されたXタイプなど、フォード傘下時代のモデルは、ジャガー本社の関係者にとってはとにかく記憶から消し去りたいクルマのようだ。Xタイプはジャガー版のパイクカーとも言える、古きジャガーのイメージを被ったフォード車だったわけで、肝心の米国市場では残念ながら成功しなかった。当時はジャガーもランドローバーも、そしてマツダもフォード傘下だったが、紆余曲折を経てそれぞれフォードから離れた。そしてマツダはご承知のとおり目下好調で、ランドローバーもイヴォークが大ヒットしているが、ジャガーの方は今ひとつというのが現在だろう。それはフォード傘下で作られたモデルの失敗が尾を引いているから、と内部では考えられているようだ。
当時、何度か試乗したSタイプや、大規模な発表会を今でも記憶しているXタイプについて今思い出すと、いわゆる旧き良きブリティッシュカーのイメージどおりで、内外装の印象はそんなに悪くなかった。ただ、走らせてみて感銘を受けることはなかったし、何しろ質感や品質面では課題が多かった。Sタイプなどモデルライフ途中で内装が一新されたし、知人が買ったXタイプは、メカトラブルがやたらあった。そんな知人にはジャガーに裏切られた感が残ってしまったようだ。
ジャガーがそんな過去を払拭すべく、2007年に発表したのが初代XFで、伝統をスッパリ断ち切るようなデザインが賛否両論となった。そして2010年に登場した5代目XJも同じデザイン路線で、当時はモーターデイズでも「スタイリングがジャガーらしくない、などと言う人は『昔のクルマ好き』だと思う」としつつ、「ずいぶん前に無くなってしまったジャガーのノーズマスコットのようなものは、アイデンティティとしてあるといいと思う」とも書いている。
今回のXEも、現行のXJやXF、そして次期XFと同じ路線であり、これまでに8年、そして今後少なくとも4年以上、都合12年以上、ジャガーサルーンはこのデザインで行くということになる。アウディでもBMWでも、ラインナップ全体で統一感のあるデザインにするわけで、そこに疑問を差し挟むつもりはない。ただ、ジャガーの場合は、フォード時代の失敗に懲りず、昔からのクルマ好きでもオオッと思えるような伝統的な「ジャガーのデザイン」で出てきてもよかったと思う。それは次期XJの役割となるのだろうか。
「これが新しいジャガーか!」と驚嘆したい
いや、もう10年近くこの形こそがジャガーなのだから、いまさら何を言ってるんだ、というのが正解なのかもしれない。レクサス ISやメルセデス・ベンツ Cクラスあたりのデザインが過激なほど斬新なものに変わりつつある中で、現行ジャガーのシンプルなデザインの方が、逆にクラシックな魅力を持ち始めているとも言える。外観ならCクラスやISより、XEの方が好き、という人は確かに存在するだろう。
運転した時の印象も、今のXJ、XF、XEと、デザイン同様に共通するものがある。それはスポーティさで、特にサイズから言って、完全にドライバーズカーであろうXEの場合は顕著。ライバルは3シリーズだからさもありなん、ではある。ただ、その軽快さは古いクルマ好きの感覚「ジャガーの猫足」とは違う。また、ターボエンジンの特性はやや高回転型で、その意味でも妙にスポーツカーっぽい。トルク豊かなディーゼルのほうが、ジャガーサルーンらしい走りになるのではないかとも思えた。昨今の逆風に負けず、XEのディーゼル車がスムーズに導入されることを期待したい。
ちなみに運転席は、インパネの強烈な湾曲造形によって、スポーツセダンらしいタイト感を演出してあるが、その割にレザーシートのホールド性が低いのはアンバランスに感じられた。何にしろ、この室内のタイト感がこのクルマの性格を表している。買う側としても、それをこの運転席からの眺めで理解するべきだろう。
としたうえで、過去10年のジャガーの外観やグリルデザインを思い出せない人、いまだ昔のジャガーのイメージしかない人、そんな人も含めて「これが新しいジャガーか!」と驚嘆させるエクステリアデザインを打ち出してもらいたいと思う。その場合、キーはやはり昔風のグリルデザインではないか。レクサスがRXをフルモデルチェンジして、いよいよスピンドルグリルが出揃ったが、過去のデザインアイデンティティを持たないトヨタはこれまで相当苦しんできて、ついにああなった。しかしジャガーなら、いかにもジャガーという顔を打ち出すことができるはず。今のXJ、XF、そしてこのXEも、それだけで随分印象は変わるのではないか。そこはちょっともったいない気がする。
試乗車スペック
ジャガー XE First Edition
(2.0L 直4ガソリンターボ・8速AT・558万8000円)
●初年度登録:2015年9月 ●形式:CBA-JA2GA
●全長4680mm×全幅1850mm×全高1415mm
●ホイールベース:2835mm
●最低地上高:110mm ●最小回転半径:5.5m
●車重(車検証記載値):1600kg(830+770)
●乗車定員:5名
●エンジン型式:204PT
●排気量:1998cc
●エンジン種類:直列4気筒・DOHC・4バルブ・直噴ターボ・縦置
●ボア×ストローク:87.5×83.1mm
●圧縮比:10.0(±0.5)
●カムシャフト駆動:タイミングチェーン
●最高出力:147kW(200ps)/5500rpm
●最大トルク:280Nm (28.6kgm)/1750-4000rpm
●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/63L
●トランスミッション:8速AT(8HP45)
●JC08モード燃費:11.8km/L
●駆動方式:FR(後輪駆動)
●サスペンション形式(前):ダブルウィッシュボーン+コイルスプリング
●サスペンション型式(後):インテグラルリンク+コイルスプリング
●タイヤ:225/45ZR18(Dunlop SportMaxx RT)
●試乗車価格(概算):558万8000円 ※オプション:-円
●ボディカラー:アルティメイト・ブラック
●試乗距離:約220km ●試乗日:2015年10月
●車両協力:ジャガー名古屋中央