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ホンダ Z新車試乗記(第46回)

Honda Z



1998年10月23日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

革新のプラットフォームを採用した新ジャンル軽自動車

'70年代に軽自動車のスペシャリティモデルとして人気を博したZの名前を復活させた今回のZも、新規格軽自動車に新風を吹き込む特別な一台になる可能性を秘めたモデルだ。

新型Zは、Jムーバーに続き、ホンダが新たに提案する「Kムーバー」シリーズのひとつ。街中からアウトドアまででのユーズをイメージし、小型車並みの居住空間を持った新ジャンルのスモールカー。全長の短さを革新のプラットフォーム「UM-4(アンダーフロア ・ミッドシップ・4WD)」によりフォローした。

価格帯&グレード展開

明快なグレード構成、NAとターボの2タイプ

NAエンジンの「Z」が114.8万円、ターボエンジンの「Z TURBO」が128.8万円。デュアルエアバッグは標準装備される。

パッケージング&スタイル

メカは床下に、床上は人のための快適空間、「UM-4」が可能とした合理的パッケージング

Zの最大の特徴は、何といっても「UM-4(アンダー・ミッドシップ・4WD)」を採用した合理的パッケージングにある。これは、エンジンを床下の後輪駆動軸前方に縦置きし、ビスカスカップリング式のフルタイム4WDを組み合わせたメカニズム。平たくいえば、走るためのメカはボディ下半分に集約させ、上半分を居住空間+荷室空間としたユニークな車両レイアウトということになる。これは軽自動車では初の試みで、世界的に見ても珍しいもの。ミッドシップ4WDは、スーパーカーのランボルギーニ・ディアブロLMぐらいしか存在しないだろう。

このUM-4の採用によって、2380mmのスーパーロングキャビンとしながらも、50対50の前後重量配分が実現できた。低ヨー慣性モーメントによって素直なハンドリング性能や、ブレーキ時にもしっかりとリアに荷重を残すためブレーキ性能が最大限に発揮できるという恩恵が得られるのだ。また、最低地上高は大径タイヤにより190mmも確保されているのでオフロード性能も備えている。

このほか、エンジンのないフロントノーズ部を全てクラッシャブルゾーンとして使えるため、世界最高水準の衝突安全性能が得られたこと、前方からのエンジン透過音が無く静粛性が高いこと、前輪の切れ角が大きくでき、15インチタイヤ装着にも関わらず、最小回転半径4.6mが実現したことなど、数多くのメリットが上げられる。

小型車並みの室内長を持つ2360mmスーパーロングキャビン

全長3395mm×全幅1475mmは新規格軽共通の外寸だが、全高は1675mmもある。またホイールベースは同社の新型ライフと同じ2360mmとしている。前後オーバーハングが極めて小さい、典型的なショートノーズ・ビッグキャビンのスタイルとなっている。角を丸く処理した直線パネルのボディに、軽としては異例の大径15インチタイヤを与えているために、印象的なプロポーションとなっている。特にサイドビューは、とても軽とは思えない車格感を醸し出している。そしてボディサイドの3本のストレートラインがよりタフな印象を強めている。ただちょっと頼りない顔つきが残念。

リアタイヤの前方にあるエアインテークは、もちろんエンジン冷却用のもの。これがあるために、4ドアは今後も追加されないようだ。

ボディはご承知のように55km/hフルラップ、64km/hオフセットの各衝突基準をクリア。他社より頑丈をアピールしている。また、衝突時に車体から受ける歩行者の頭部傷害を軽減する「歩行者傷害低減ボディ」を採用した。

エンジンがフロントにない分、ダッシュパネルを前方に出すことができ、室内の長さは小型車並の2380mmを誇る。とはいってもドアを開けて内装を見る限り、「そこまで広いか?」というのが正直な感想。後席も感動するほど広くはなく、むしろ背もたれが低く、ヘッドレストも付いていないので4人乗車では不満が残る。しかしバックドアを開けて、なるほど2380mmというのは荷室スペースに生かされているのだ、ということに気付く。かなり広く、日常的な使い方なら、後席使用時でもまず不満を覚えることはないだろう。また、後席は座面を跳ね上げて前席背後に畳むことができ、その時の奥行きは1000mm。滑りにくく防水性に優れたビニール風素材のマットも、安い素材の割に格好良く見える目新しいアイテムのひとつ。さらに前席、後席ともに水平にリクライニングができる。仮眠スペースとして使えるので、レジャーシーンでの活躍が期待できるだろう。

photo_3.jpgインパネは道具として機能重視のレイアウトとしながらも、洗練されたデザインとなっている。ホワイトメーター、一部鉄板むき出しドアトリムなど、お洒落な仕上がりだ。収納スペースは豊富だが、いずれもサイズ的に小さいものばかり。エンジンのないボンネット内にはウォッシャータンク、バッテリー、スペアタイヤが搭載されるほか、容量20リットルのユーティリティボックスが装備される。

ドラポジはやや足が前に投げさせられるが、後席ともにクロカン(ワンボックス?)的な高い視点で、全方位で開放感が味わえるもの。

基本性能&ドライブフィール

ホンダ軽初のターボエンジン、際だって力強くはないが市街地から高速までストレスのない気持ちのいい走りが自慢

搭載エンジンは2種類。52馬力のNA仕様と64馬力のターボ仕様で、どちらもLEV(ローエミッションビークル=低公害車)対応となっている。ところでホンダがターボを起用するのは初代シティおよび初代レジェンド以来のことで、軽自動車では初となる。それだけにホンダファンは特に興味がそそられるはずだろう。9.5kgm/3700rpmの最大トルクは、スズキやダイハツのスポーツターボと比べ、控えめだ。ミッションは全車、4ATで、フロアセレクト方式。できれば、コラムシフト方式でステアマチックを備えたCVTの搭載が望ましいところだが、今のところ、シビック用のCVTは大きすぎることもあって、採用できないようだ。また全車LEV(排ガスを現行の10%レベルに低減)だ。

試乗したのはターボ仕様。エンジンをスタートさせてみる。ミッドシップレイアウトということで、室内に侵入してくるエンジン音、振動が気になっていたが、これが意外にも静か。アイドリング時はわずかな振動ぐらいで、ふかしてみても耳に残るようなエンジン音レベルではない。

アイドリングよりほんのわずか上の回転からターボが効果を発揮し、レスポンスは実にいい。パジェロミニ(4WD)より20kg重い970kg車重ということもあって、重さをはやはり感じられ、鈍さはないもののパワフルではない。恐らくNA仕様では加速時に多少のストレスを感じるだろう。一度走り出せば、広い範囲でトルクがでているので、気持ちよく走らせることができる。ターボによる過給音、ヒュイーンという音の大きさが気になるところだが、加速性能そのものは全く問題はない。高速巡航のエンジン回転数は80km/hで約4000回転、100km/hで約5000回転と、軽の4AT車としては一般的な数値だ。レジャー要素を兼ね備えているクルマだけに、もう少し回転数が低くなれば、より快適なクルージングが望めると思う。

素直なステアフィーリングとねばり強い足まわり、でも転びそう? パワステが軽すぎる

ミッドシップらしさを感じるのがハンドリング。ステアリングを切り始めると同時に前後同時に発生するロール感はまさにミッドシップならでは。もちろん素直にその方向に曲がるニュートラルなステアだ。そして攻め込んだときにアクセルを放すと、すかさずオーバーステア。面白い。アイポントが高いために、何となく腰高感を感じてしまうのだが、エンジンは床下にあるので重心は低く、粘り強いサスペンションは、ちょっとやそっとのことで挙動を乱すことはなく、ドライバーが思っている以上にコーナリング性能の限界は高いといえる。だけど心理的には、ちょっぴり「転ぶ」のではという不安も残る。

違和感があったのが電動パワステ。指一本で回せるほどで軽すぎるのだ。女性にとって車庫入れなど、低速時にはこの軽さはありがたく感じるかも知れないが、走行中でも適度に重くはならず、終始フラフラ状態。新型ライフも同様に電動パワステを採用しているが、こちらは走り出すと自然な重みがあった。チューニングの問題とは思うが。

ここがイイ

すべてにおいて意欲的な作りは評価できる。なんで今さら軽をここまで作り込むのかという気はするが、それにしても良くできている。2人で乗っている限り、リッターカークラス以上の車格感があり、ホンダ自社ブランドでいえばロゴあたりを脅かすのではと思ってしまう。ナビの設置位置も文句なし。スタイルもカッコイイかどうかは人によって評価が違うと思うが、徹底的に独自であることは異論がないだろう。

ここがダメ

あえていえば価格か。小型車並みだからしょうがないとはいえ、ターボは128万8000円もする。ABSをつければ133万8000円だ。HR-Vの2WDがABSが付いて138万4000円で、その差はわずか(共にATだが、Zは4速、HR-VはCVT)。全く車格の違う2車だが、購入層は意外に近いのでは。となると、この価格差はすごく微妙。パワーは64馬力に対して105馬力。あなたならどっち買います?

総合評価

photo_2.jpgこのクルマはマーケティング主導でなく、50周年で意気が上がるホンダのやる気が生み出した提案型商品だろう。その意味では消費者側としても、今一つ理解しにくいはず。今回、軽は前代未聞の新型ラッシュ。ライバルがやたら多い中、このZが支持を集められるかは微妙。月5000台の販売目標はかなり冒険なのでは。すごく面白いクルマなので、ビートの二の舞にならないことを望む。

ちなみにこのユニークなプラットフォームは近い将来セダンにも転用される模様。Zは若者向けだが、そのセダンは全く新しい全世代向けのシティコミューターとなることを期待したい。

公式サイト http://www.honda.co.jp/Z/2002/open2.html

 
 
 
 
 

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