Published by DAYS since 1997 from Nagoya,Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > MOTOR DAYS ピックアップニュース > ホンダ、新型オープンスポーツ「S660」を発売

ホンダ、新型オープンスポーツ「S660」を発売

カテゴリ:新車 / 2015年03月30日

 
 

ホンダは2015年3月30日、新型2シーター・オープンスポーツの「S660(エスロクロクマル)」を発表した。発売は4月2日から。中部地区での発表が行われたヒルトン名古屋(名古屋市中区)からリポート。

ビートより全幅は80mmワイド

「S660」は専用設計のオープンミッドシップボディに、660ccの直3ターボエンジンを搭載した軽スポーツ。ホンダによれば「見て楽しい、乗って楽しい、あらゆる場面でいつでもワクワクする、心が昂ぶる本格スポーツカー」を追求した、通称“ガチ”スポーツである。ちなみに車名の読みは、エスロッピャクロクジュウではなく、語感の良さでロクロクマルにしたとのこと。

 

いわゆるタルガトップのオープンボディは、全高が1180mmとビート(1175mm)並みで、近年の量販車としては抜群に低い。ホイールベースは2285mmと、やはりビート(2280mm)と同等。

ただし全長は旧軽規格のビートより100mm伸びて3395mmになり、全幅も80mm拡幅されて1475mmになった。また、ホイール外径もビートより前後それぞれ2インチ大きくなり、前165/55R15、後195/45R16となった。おかげでプロポーションは見事なほど均整が取れており、文句なしのカッコよさを見せる。

 

リアに横置き搭載されるエンジンは、現行ホンダ軽でおなじみの直3ターボ「S07A」の改良型(64ps/6000rpm、104Nm/2600rpm)。S660のために新開発された6速MT(軽自動車で初)は、リンケージがワイヤー式ながらS2000並みの操作感を実現したという。開発陣としては6MTに並々ならぬこだわりがあるが、広く多くの人に乗ってもらうため、現行モデル用をベースにした7速パドルシフト付CVTも用意し、AT需要にも応えている。

6MTで車重830kgを実現

専用ボディは高剛性と軽量化の両立を追求したもの。6MTで830kg、CVTで850kgという車重は、一般的な軽自動車レベルであり、ミッドシップ、オープンボディ、様々な快適・安全装備、凝った足回りといった重量がかさむ要件を考えると、驚異的に軽い。ホワイトボディの60%以上には高張力鋼板が使用されており、凝ったデュアルリンクストラット式のリアサスを支持するサブフレームは贅沢にもアルミ製だ。

 

前後重量配分はビート(43:57)より改善され、45:55。スペアタイヤレスにより空いたボンネット下のスペースには、一番底の部分に重量のある補器用バッテリーを搭載。上部はロータス・エリーゼ方式で折り畳んで収納する脱着式ソフトトップ「ロールトップ」を収納する。つまりソフトトップの脱着は、乗車しままでは出来ない。

2名乗車時の積載スペースは事実上ゼロ

着座位置は期待以上に低く、ここもビート並み。ホンダ市販車で最小径というφ350mmのステアリングホイールは、テレスコ調整こそないが、チルトは可能。頭上空間はミニマムだが、スポーティなドライビングポジションが自然に取れる。シートの作りは非常によく、ここはS2000を思わせる部分。内装の質感もビートというよりS2000並みだ。

キャビン直後にはリアウインドウがあり、その中央部分は電動昇降式になっている。これは風の巻き込みを調整したり、エンジン音をより楽しむための工夫だ。

 

また、ビートの場合は運転席より助手席の方が横幅が狭い非対称デザインだったが(助手席ドア側のエルボールームは皆無だった)、S660では運転席と助手席のスペースがほぼイーブンなので、助手席でも圧迫感を感じない。

ただし、幌をボンネット下に収納した場合、積載スペースは事実上ゼロ。リアは全てエンジンルームであり、シート背後に荷物を押し込むスペースもほぼ皆無。2名乗車時の積載性はきっぱり割り切られている。ある意味、バイクよりも積載性は低い。それがS660の潔さでもあり、弱点でもある。

 

ちょっとだけCVT車に試乗

短時間ながら、発表会では一般道で、CVT車に試乗できた。タイトで視点の低い運転席に腰を落とし、いざ名古屋の街を張り出すと、目線の低さ、ボンネットの低さ、軽快なノーズの動き、3気筒エンジン独特の唸り、振動などが、ビートを彷彿とさせる。

一方で、ビートと違うのは、3連スロットルの吸気音の代わりに聞こえてくるターボチャージャーの作動音、アクセルオフ時の「プシュー」というブローオフバルブ音。そして極太のトルク感だ。

 

また、ボディの剛性感もS660の方が明らかに高く、乗り心地も軽自動車とは思えないほど重厚で滑らか。トルクがあるので、MT同士での乗り比べてもビートよりS660の方が圧倒的に乗りやすいと思われる。エンジンのレスポンスやサウンドなどは6MTで再確認したいところ。

今回はCVT車に試乗したため、運転は極めてイージーだった。街中なのでハンドリング云々は分からなかったが、注目度は抜群。小さな発見は、頭の後ろにある昇降式リアセンターガラスを開けて走っていると、そこからエンジン(特にターボチャージャー)の熱気を含んだ風が吹き込んでくることだった。

生産はビートと同じ八千代工業で、半手作り


ホンダアクセスの純正アクセサリー装着車。アクティブスポイラー(約70km/hでリアスポイラーが上昇)も販売店オプションで用意する

生産はかつてビートの生産も担った八千代工業。同社は現在、四日市製作所(三重県)でバモスやアクティの生産を行っており、S660の生産も同工場で行われるが、一部の工程を除き、S660専用のラインで手作りに近い形で生産される。

販売目標台数は月間800台だが、これも生産キャパシティに応じて設定されたもの。現在までの予約注文分は7月までに納車予定とのこと。なお、海外への輸出は(今のところ?)考えていないという。

価格はスタンダードの「β」(同)が198万円、スポーツレザーシート等を装備した上級グレード「α」(6MT、CVT)が218万円。また、発売を記念した660台限定車「S660 CONCEPT EDITION」(同)が238万円。

 

DAYSのコメント

ビートの開発期間中くらいに生まれた開発責任者(LPL)の椋本陵(むくもと りょう)氏は、高校を卒業してからモデラーとして入社したという26歳。そして開発メンバーの平均年齢は38歳くらいとか。若い。そんな若い人が「クルマって楽しいんだぜ!」と、6MT・ミッドシップの、ある意味で古典的な本格スポーツカーを作ったわけで、ホンダっていい会社だなあと思わせる効果は高い(ちょっと意地悪な言い方だが)。

これを作る八千代工業・四日市製作所の、1日40台を生産できるラインは、ロボットと治具ではなく、人と治具が共存する、新しい手作りの方法を採用している。それもある意味、古典的な手法と言えるかも。そして消費者が皆、それに拍手するという、いろいろな意味で「美しい工業製品」が久々に登場したわけだ。ちょっと涙が出そうに。一時的なブームでなく、ぜひ末永く売れ続けて「成功」して欲しい。


■外部リンク
ホンダ公式HP>プレスリリース>S660を発売(2015年3月30日)