Published by DAYS since 1997 from Nagoya,Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > MOTOR DAYS ピックアップニュース > プリウスPHV、ついに市場投入

プリウスPHV、ついに市場投入

カテゴリ:新車 / 2011年12月03日

 
 

トヨタは11月29日、日本で初めての市販プラグインハイブリッド車(以下PHV)となる「プリウスPHV」を2012年1月30日から発売すると発表した。車両価格は320万円からと低めで、補助金を活用すれば275万円からと、多くの人にとって手が届きやすい販売価格を実現。全トヨタディーラーで販売され、国内では年間3万5000台から4万台を販売目標としている。欧米でも販売され、合計では年間6万台が目標だ。

PHVでもEV並みに石油消費が削減できる

プリウスPHVは、ごく簡単にいえば現行プリウスに改良された新型電池を積み、制御系を変更したもの。EV走行距離を26.4kmに伸ばしたほか、EVでの最高速度も100km/hに向上。できるだけエンジンをかけずにEV領域で走れることで、EV走行とHV走行の燃費を複合して算定した「プラグインハイブリッド燃料消費率(PHV燃費)」を61.0km/Lとしている。事前に一般ユーザーへ貸し出された25台の実験車両では、平均して一日に2回充電する使い方で、44.8km/Lの平均燃費を記録。これは石油消費量で言えば72%の削減効果に相当するという。

実験に参加したある主婦は、平日も休日も買い物など近距離走行しかしないパターンで3ヶ月間、約2500kmを走った結果、EV走行率94%で249km/Lという驚異の「燃費」となった。3ヶ月間でガソリンは10リッターしか使わなかったわけで、実用燃費10km/Lのガソリン車と比べれば、月額1万円以上ガソリン代を節約できた計算になる。一方、休日は遠出をするなどEV走行率が44%と低めだった人でも、「平均燃費」は41km/Lという計算になったという。

トヨタが行った試算によれば、ガソリン車をすべてHVに置き換えた場合でも、石油消費は約40%削減できるが、PHVであれば前述のように約70%の削減が可能という。EVだと100%達成できそうなものだが、EVでは現在の性能で考えた場合、長距離走行ができないため、その部分でガソリン車やHVが使われることになり、75%~85%の削減にとどまるという。つまり現実的には、PHVが普及することでEVに比する石油消費削減効果が期待できる、とトヨタは説明している。

 

日本では一日当たりの走行距離が20km以下のケースが過半数というデータを元に、プリウスPHVはまず搭載電池をあまり大きくせずに、低コストと広いスペース効率を実現。エンジンも必要以上に小さくせず、プリウス同様のシリーズ・パラレル方式のハイブリッドシステムを採用。つまりEVで使う範囲を低めに設定し、残りをHVとすることで、現実的な性能を確保した作りとなっているわけだ。

またEVは航続距離や充電インフラが不安なため、たとえ100km走れると分かっていても、早め早めの充電を心がけてしまい、現実的な走行距離をさらに縮めてしまっている。PHVなら走れるだけEV走行し、あとはガソリンがある限りどこまでも走れるわけで、確かにより現実的な次世代環境車になるというわけだ。

「つながるクルマ」がいよいよ現実に

プリウスPHVの重要な訴求点は、環境性能だけではなく「スマートコミュニティ」という概念を前面に押し出したことだろう。エネルギー需給を管理する「トヨタスマートセンター」を用意し、スマートフォンなどを使っての「つながるクルマ」がいよいよ現実化しているのだ。

まず、「つながるクルマ」の分かりやすいサービスとしては、3年間無料の「PHV Drive Support」がある。これはPCやスマーフォンを使ってPHVの便利な利用法が分かる「オーナーズナビゲーター」、電池残量・残走行距離・近隣の充電ステーション・燃費ランキングなどがわかる「eConnect」、クルマが充電忘れや電池残量をつぶやくSNSの「トヨタフレンド」、バッテリー状況を販売店がアドバイスする「バッテリーいたわりチェック」、販売店での一時間無料充電、以上の5つがセットとされたサービス。PHVにDCM(通信機能)付きの純正カーナビを装着すれば、車両とスマートセンターがつながり、これらのサービスが利用できる。外部からスマートフォンでエアコンを操作することも可能だ。

 

「CAN-BT」のスイッチは天井にある

画期的なのはDCMなしの車両も含めて、もれなく「CAN-BT」と呼ばれる装置が装備されること。スマートフォン経由で車両情報がスマートセンターに送られ、これらのサービスの多くを利用できる。スマートフォンに専用アプリを入れ、CAN-BTのスイッチを入れるとブルートゥース(BT)でつながり、車両情報がスマートフォン経由でスマートセンターへ送られる、という仕組みになる。「CAN-BTの標準装備」は、クルマのIT化にとって画期的な出来事と言っていいだろう。車両側の情報が常にスマートセンターに送られ、スマートセンターからは様々な役立つ情報が送られてくる。これが実現したことでトヨタはプリウスPHVを「トヨタグローバルビジョンを具現化する最初のクルマ」と位置づけている。

またPHVは充電に大量の電流を必要とするため、家庭のブレーカーが落ちることがないよう、総電力消費量のチェックをして、PHVの充電タイミングを制御する「H2Vマネージャー」をトヨタホームから販売。家庭内のLANにつなげることで充電予約がPCやスマートフォンからも可能になる。家庭の総電力消費量のチェックも可能だ。こうしたインフラ装備もクルマと同時に準備されている。

とはいえ、いくつか不満がないわけではない。エスティマハイブリッドにあるような100V電源の取り出し口はなく、車両からの給電はできない。また200Vで90分、100Vでは180分で充電可能とはいえ、マンションなど集合住宅での充電インフラに関しては、全くと言っていいほど対応策がない。したがって欲しくても買えないという人はかなりいるだろう。PHVを今後の柱とするのであれば、個人向けのインフラ整備にも、より力を入れてもらいたい。

プリウスPHV、超チョイ乗り試乗インプレッション

今回トヨタが用意してくれたのはMEGA WEBのライドワンコースを2周するだけという試乗。

夕暮れが迫る時間で、ライト点灯、ヒーターもオンという状態だったが、フル充電されたプリウスPHVは、EVとしてゆるゆると走り出した。緩やかな加速をする限りエンジンはかからないが、アクセルをあおるとエンジン始動。速度というよりアクセル操作によってエンジンは始動するようだ。アクセルを緩めればエンジンが止まってEVになるはずだが、なぜか止まらない。どうやら始動直後など、電池に様々な負荷がかかる状況ではエンジンは止まらないようだ。

そこで信号待ちをするように一旦停車して再び動き出すと、当然ながら再びEV走行となった。意地悪くアクセルをあおって加速するとエンジンはかかるが、アクセルを緩めると今回はエンジンが止まってEVに戻った。その後は2周の間、エンジンがかかってもアクセルを緩めるとEVに戻った。

この習性が分かると、ついついアクセルを踏まない運転をしようと思ってしまう。エンジンがかかるのが、なんだかもったいない気持ちになるのだ。そこで自然に緩やかなアクセルワークとなり、結果として優しい運転になる。皆がPHVに乗っていたら穏やかな交通の流れになるような気がする。PHVは人にやさしい乗り物とされるが、人を優しくする乗り物でもあるようだ。 《水野誠志朗@DAYS》